2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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刺刺激激応応答答性性ババイイオオママテテリリアアルルをを用用いいたた構構造造制制御御さされれたた血血管管疾疾患患 モモデデルルのの体体外外構構築築ととそそのの疾疾患患研研究究 東北大学大学院工学研究科 教授 山本 雅哉 1. 研究の目的と背景 本研究の目的は、血管に生じる病気(血管疾患)の疾病モデルを体外で構築する技術を開発することである。動脈硬化や動脈瘤などの血管疾患は、心筋梗塞、脳梗塞、くも膜下出血など、生命機能を著しく損なう。また、肺動脈の小動脈が狭くなる肺高血圧症では、心臓への慢性的な過負荷により心不全を併発する。血管疾患に対する理解を深めることは、診断・治療技術の開発に必要不可欠であるが、動物モデルではヒトの病態を再現できないという問題がある(参考文献1、2)。これまでに研究されてきた細胞積層化や細胞シートなどの従来技術は、細胞の自己組織化に基づいて血管ネットワークが構築されるため、血管壁の厚みや構成する細胞の種類などが部位特異的に変化する血管疾患の疾病モデルを体外で構築することは困難である。そこで、本研究では、血管疾患モデルを構築するための技術として、ヒトの細胞を用いて、血管構造、血管の太さ、血流速度、細胞の種類などを再現性よく変化させることができる技術について検討した。 2. 研究内容 2.1. 肺高血圧症患者由来細胞の3次元積層化培養 共同研究者の狩野光伸(岡山大学ヘルスシステム統合科学研究科)ならびに小川愛子(国立病院機構岡山医療センター)とともに、肺高血圧症患者由来血管平滑筋細胞を3次元培養する実験系について検討した(参考文献3)。まず、岡山医療センター倫理委員会の承認を得て、患者の同意の元、肺高血圧症の病変組織より血管平滑筋細胞(PASMC)を単離した。得られた細胞をコラーゲンコートディッシュ上で10%ウシ胎児血清を含む低グルコース濃度(1 g/L)Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium (DMEM)中で増殖後、フィブロネクチンをコートしたカルチャーインサート上で培養した。培養液に血小板由来増殖因子(PDGF)-BBを添加することによって、PDGF-BB(10 ng/mL)添加がPASMCの3次元化積層化に与える影響について検討した。その結果、PDGF-BB添加により、PASMCの積層化が有意に促進されることがわかった。また、この積層化は、抗悪性腫瘍剤の一つであるイマチニブの添加により阻害された。同様に、肺動脈性肺高血圧症の治療薬であるボセンタンや勃起不全治療剤であるタダラフィルもイマチニブと同様の阻害効果を示した。さらに、細胞周期制御に関わるCyclin D1をコードする遺伝子(CCND1)の発現についても同様の傾向を示した(図1)。このことから、PASMCの積層化には、細胞増殖をともなうこと、また、積層化の厚みによって、治療薬のスクリーニングができることを見いだした。 図1 PASMCの3次元積層化培養に対する 薬剤添加効果 2.2. 刺激応答性バイオマテリアルを利用した血管疾患モデルの作製 刺激応答性バイオマテリアルとして、細胞傷害性の少ないソルビトールに応答して水に対する溶解性が変化するm-アミノフェニルボロン酸(APBA)導入ゼラチンを合成した。得られたAPBA導入ゼラチンを用いて、3次元造形装置により造形を行った。すなわち、XYZステージに対して、温調システムと高精度デジタルディスペンサーを装着した卓上型塗布ロボットにより、図2に示す通り、Y字型のテンプレートを作製する厚みCCND1発現−96−発表番号 48 

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