2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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ことができた。 図2 刺激応答性バイオマテリアルからなるY字型のテンプレート 次に、得られたY字型のテンプレートにヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、あるいはPASMCを接着させた後、それらをコラーゲンゲルに包埋した。所定期間培養後、培地にソルビトールを添加したところ、テンプレートが除去され、細胞がコラーゲンゲル内に転写されていることがわかった(図3)。また、PASMCについても、同様にコラーゲンゲル内に接着させることができた(データ省略)。 図3 HUVEC(緑)を接着させた血管疾患モデル さらに、コラーゲンゲル内に接着させたHUVECについて、血管内皮細胞のマーカーに対する免疫染色を行った。その結果、モデル内のHUVECは、正常血管内皮細胞と同様のマーカーを、同様の立体配置で発現していることがわかった(図4)。 図4 血管疾患モデルに対する免疫染色 このことは、本研究で開発した刺激応答性バイオマテリアル、ならびに様々な血管由来の細胞を組み合わせて利用することによって、体外で血管疾患モデルを構築できることを示している。また、これらのモデルに対して、各種造影剤を導入後、高解像度の核磁気共鳴画像装置(MRI)や微小領域のコンピュータ断層撮影(micro CT)などにより3次元画像構築することによって、3次元モデルを構築することにも成功している(データ省略)。これにより、血管疾患モデル内の流体力学的解析ができつつある(データ省略)。 3. 今後の展開 われわれは、本研究とは別のプロジェクトにおいて、ある種のスルホベタインポリマーが細胞膜透過性を示すこと(参考文献4)、さらに、組織浸透性が高いこと(参考文献5)を示してきた。本研究で開発した血管疾患モデルを基盤として、このようなドラッグデリバリーシステム(DDS)の病変組織内での動態が、体外で評価できることが期待できる。このため、疾患モデルの構築にともなって、より効果的なDDSの開発が可能になると期待できる。 4. 参考文献 1) M. R. Kano, Nanotechnology and tumor microcirculation. Adv. Drug Deliv. Rev., 74, 2-11 (2014). 2) M. Yamamoto, S. Rafii, and S. Y. Rabbany, Scaffold biomaterials for nano-pathophysiology. Adv. Drug Deliv. Rev., 74, 104-114 (2014). 3) C. Mori, H. Y. Tanaka, Y. Izushi, N. Nakao, M. Yamamoto, H. Matsubara, M. R. Kano, A. Ogawa, 3D in vitro model of vascular medial thickening in pulmonary arterial hypertension. Front. Bioeng. Biotechnol., 8, 482 (2020). 4) N. Morimoto, Y. Oishi, M. Yamamoto, The Design of Sulfobetaine Polymers with Thermoresponsiveness under Physiological Salt Conditions, Macromol. Chem. Phys., 221, 1900429 (2020). 5) 出願番号:特願2018-207787、発明の名称:三次元細胞凝集塊内導入剤、出願日:2018年11月02日 5. 連絡先 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6−6−02 東北大学大学院工学研究科材料システム工学専攻 電話:022-795-7303 メール:masaya.yamamoto.b6@tohoku.ac.jp ICAM-1Lumen50 µmNucleusVE-cadherin100 µm100 µmZO-1−97−

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