2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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金金属属ナナノノ粒粒子子アアレレイイにによよるる光光・・熱熱ママネネジジメメンントト 京都大学大学院工学研究科 助教 村井 俊介 1. 研究の目的と背景 本研究は金属ナノ粒子アレイを中心とするナノ構造を用いて,より明るく,より低電力な照明の実現に需要な因子である,光マネジメント(=光をいかに効率よく素子に取り入れ,取り出すか)の新たな方法論を確立することを目的とする.研究代表者はこれまでの研究により金属ナノシリンダーアレイが指向性の高効率光取出しフィルターとして機能することを見出し,次世代光源として利用可能な指向性白色光源のプロトタイプを作製した( 図1).光取り出し効率の著しい向上がAl ナノ粒子周期アレイ構造の高い散乱断面積に起因することを指摘したものの,まだ多くの研究者・技術者が納得する十分な学理を確立しているとは言い難い.そこで本研究では,実験事実とシミュレーションを組み合わせ,金属ナノ構造による光取出しの高効率化を内包する上位概念として「光マネジメント科学」を設定し,光を自在に制御するナノ構造について金属,半導体,絶縁体などの材料を横断した普遍的な学理体系を構築することを目標とした.学術的には金属ナノ構造による光取り出しの高効率化に関する新手法として教科書に載るような方法論を構築することを目指し、社会的には,ユビキタス元素からなるAl やTiN,Si を活用して研究をすすめることで,照明,太陽電池,ディスプレイなど多くの分野へ実装可能な理論・技術として確立させ,省エネルギー・高効率な光利用に貢献することを最終目標とする. 本計画で提案する光マネジメント科学とは,光エネルギーを光機能性材料へ自在に取入れ,閉込め,取出すための界面の設計指針である.2 次元構造でこのような機能が発現すると,3 次元構造に比べ光機能性材料との組み合わせ難易度が格段に下がるため,関連材料開発分野を巻き込んだ多くの波及効果が期待できる.3年間の研究でプラズモニックアレイを中心に,誘電体フォトニック結晶技術をはじめとする光学技術,ナノインプリントをはじめとする微細加工技術,金属・半導体・セラミックス材料合成技術を統合・整理しナノ構造の設計原理から作製技術までを包括する「光マネジメント科学」へと昇華することを本研究の目的とする.光を損失なく光機能材料へと伝える界面設計技術は,光源,光検出,太陽電池など,高効率なエネル ギー変換のプラットフォームとして幅広く活用でき,学術的・産業的に有用である. 光マネジメント科学の旗印を掲げ研究を進める中で,表面プラズモン励起に伴う熱をいかに制御するかが大切であることが明らかになってきた.例えば,白色LED 応用において熱は失活に結び付くのでできるだけ抑えたい.他方,光―熱変換においては発熱を積極的に利用する.共通して言えることは,熱を制御する技術,そのための熱を正確に見積もる技術を確立する必要性である.本研究ではこれらの熱マネジメント技術についても検討を進めた. 2. 研究内容 光マネジメント(金属と誘電体アレイでの指向性発光の比較):蛍光体からの発光強度を金属ナノ構造により増強する試みが長年なされてきたが,これまで,大きな増強効果が得られるのは量子収率の低い発光中心のみであった.しかし近年,研究代表者を含むグループから,金属ナノシリンダーを周期的に配列したプラズモニックアレイを用いることで高量子収率を有する発光中心からの発光強度増強が可能であることが報告されている2.しかし,金属を発光体と組み合わせる際,発光中心から金属へのエネルギー移動に伴う熱損失が懸念される為,ナノシリンダーの材料を損失の少ない誘電体に変える試みが始まっている.これまで金属ナノ粒子アレイと誘電体ナノシリンダーアレイによる発光増強効果の実験的な比較は行われていない.本項目ではAl および 図1. 金属ナノシリンダーアレイを用いた指向性白色光源のイメージ1 −98−発表番号 49

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