2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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成成層層圏圏フフロロンン分分解解ププロロセセススをを模模倣倣ししたたママイイククロロフフロローー技技術術にによよるる フフルルオオロロ官官能能基基化化反反応応のの開開発発 名古屋工業大学大学院工学研究科 教授 柴田 哲男 1. 研研究究のの目目的的とと背背景景 スマートマテリアルという近未来の材料を想定した場合,含フッ素化合物は間違いなく最重要物質である。当該研究者は,これまで一貫してフッ素化合物の合成研究に注力してきたが,その研究手法は,取り扱い容易なフッ素化試薬やトリフルオロメチル化試薬などの開発に重点をおいたものを主流としていた1)。開発した試薬のいくつかは,化学メーカーから市販されており,新規フッ素化合物の合成研究の一端を担っているといえるが,工業プロセス化学を指向した有機合成研究の場合では,我々の開発した試薬群は,元素効率,価格の面などで,全く不向きである。この問題を解決するにあたり,世界中に大量にあり,産業廃棄物として貯蔵されているフロンやハロンに目をつけた。例えば,フロン23という名称で知られるフルオロホルムはテフロン製造時に副生するフロンガスで,20,000 t/年で産出されている。地球温暖化係数は11700で,燃焼分解により廃棄されているが,それにも高い費用がかかり,その有効利用法の開発が期待されている。本研究課題では,フロン類を廃棄ではなく,フッ素源としてスマートマテリアルの材料に変換するプロセス開発研究を目指しており,フロン232)やハロン130013)(トリフルオロヨードメタン)を用いたフッ素化合物の合成研究を行っている。ここでは,フロン23を用いた成果について最新の成果を解説する。 2. 研研究究戦戦略略 フロン23を用いたトリフルオロメチル化反応を実現するには,裸の状態では発生させるのが極めて困難で,かつ短寿命のトリフルオロメチルアニオンを如何に制御するかが鍵となる。これは,裸のトリフルオロメチルアニオンが,電子反発によりジフルオロカルベンへと速やかに分解することが主因である。最近我々は,フロン23を嵩高い有機塩基を用いることによりトリフルオロメチルアニオンの安定性が向上し,トリフルオロメチル化反応に用いることに成功した2a,b)。また,ジフルオロカルベンまで無機塩基を用いて分解させることにより,アルキン類へのジフルオメチル化反応にも成功した2c)。また,フロー法を用いてのトリフルオロメチル化にも成功した2f)。そこで本手法の,適用範囲の拡大による有用性の向上に取り組んだ。 3. 研研究究結結果果(([2.2.2]-cryptandをを用用いいたたフフロロンン23にによよるるトトリリフフルルオオロロメメチチルル化化反反応応)) 我々は,嵩高い有機超塩基であるP4-tBuを用いてカルボニル化合物等に対してフフロロンン23を用いたトリフルオロメチル化反応2a-d)や嵩高いカウンターカチオンを用いることでトリフルオロメチルアニオンを安定化し2e),トリフルオロメチル化反応を行っている。ここでは,様々なクラウンエーテルを検討することで,[2.2.2]-cryptandを用いたトリフルオロメチル化反応の開発を行った。ベンゾフェノンを基質として,18-crown-6, [2.2.2]-cryptand, dibenzo-18-crown-6, 15-crown-5等のクラウンエーテルを検討した結果[2.2.2]-cryptandを用いた場合に収率96%で反応が進行したため,以下に示す反応条件で基質一般性の検討を行った。その結果,様々な置換基を有する基質に対して高い収率で目的物を得ることに成功した(図1)。 図1. [2.2.2]-cryptandを用いたケトン類のトリフルオロメチル化反応 図2. [2.2.2]-cryptandを用いたエノール化しうるケトン類のトリフルオロメチル化反応 次に,エノール化し得るケトンに対して検討を行った。ここでは,ナフチルケトンに対して最適条件を適用した結果,低収率に留まった。そこで,tBuOK と[2.2.2]-cryptandをそれぞれ3.0等量に増やし,室温下で検討した結果,65%収率で目的物が得られた。また,他の基質に対してもtBuOK と[2.2.2]-cryptandの添加量を調節することにより良好な収率で反応が進行した(図2)。 −102−発表番号 51

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