2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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であるClathrin light chain(EGFP-CLC)またはEps15(Eps15-mCh)を共発現し、タイムラプス観察を行った。その結果、EGF刺激から10分ほどで、Clathrin light chainやEps15が集積しているClathrin coated pitsにEGF受容体が集積する様子が観察された。そこで、Eps15-mChに対する結合解離プローブを作製し、IRIS超解像顕微鏡法で観察を行ったところ、エンドサイトーシス部位では、Eps15がリング状に分布していることが観察された(図3)。 図3: Eps15の超解像イメージング(A)HeLa細胞にEps-mChを発現した。固定後、EpsをIRIS超解像イメージングで可視化した(IRIS SR image)。(B)(A)の黄色い矢頭で挟まれた線上のmCherry蛍光強度とIRIS SR imageの強度分布。mCherryの蛍光画像では、Eps15の斑点状の分布しか観察できないが、IRIS SR imageでは、個々の斑点の中にリング状の分布が観察された(黄色い矢印)。 小さなリングのサイズは、約80 nmで、光の回折限界以下の分子配置が観察できていることが示された(図3B)。アクチン線維を可視化するプローブと合わせたところ、EGF受容体が集積するエンドサイトーシス部位では、アクチンストレスファイバー間の隙間にEps15のリング状構造が位置していることが明らかになった(図4)。 図4: Eps15とアクチン線維の超解像イメージングとEGF受容体(EGFR)のTIRF蛍光画像。HeLa細胞にEps-mChとEGFR-EGFPを発現させ、EGF刺激を行った。固定後、Eps15とアクチン線維のIRIS超解像画像(SR image)を取得した。 これまで免疫電子顕微鏡観察や超解像顕微鏡観察によって、Eps15は、Clathrin coated pitsの縁に分布していることが報告[6, 7]されており、本研究の結果と一致する。さらに本研究によって、エンドサイトーシス部位でEps15のリング状構造は、アクチンストレスファイバー間の隙間に配置していることから、Eps15及びエンドサイトーシス部位とアクチン線維の位置関係を規定するメカニズムの存在が示唆される。 3. 今後の展開(計画等があれば) IRIS超解像顕微鏡法は、複数の標的を結合解離プローブで連続的に標識し、順次可視化できることから、今後もプローブの種類数を増やしていく予定である。IRISによるEGF受容体や制御タンパク質の可視化は、その制御機構の解明に止まらない。免疫組織化学解析において、同一の病理標本で複数の標的タンパク質を可視化し、さらにそれらの分子的な位置関係の詳細を明らかにすることで、革新的な病理診断へと発展させることを目指す。 4. 参考文献 [1] M. Offterdinger and PI. Bastiaens, 2008. Traffic, 9(1): 147-155 [2] T. Kiuchi, E. Ortiz-Zapater, J. Monypenny et al., 2014. Sci. Signal., 7(339): ra78 [3] M Sauer, 2013. J. Cell Sci., 126: 3505-3513 [4] T. Kiuchi, M. Higuchi, A. Takamura, M. Maruoka and N Watanabe, 2015. Nat. Methods, 12(8): 743-746 [5] M. Tokunaga, N. Imamoto and K. Sakata-Sogawa, 2008. Nat. Methods, 5(2): 159-161 [6] F. Tebar, T. Sorkina, A. Sorkin, M. Ericsson and T. Kirchhausen, 1996. J. Biol. Chem., 271(46): 28727-28730 [7] KA. Sochacki, AM. Dickey, MP. Strub and JW. Taraska, 2017. Nat. Cell Biol., 19(4): 352-361 5. 連絡先(掲載してよい場合、住所、電話番号、E-mailアドレス等) 〒606-8501 京都市左京区吉田近衛町 京都大学大学院医学研究科 神経・細胞薬理学 Tel: 075-753-4397, Fax: 075-753-4394 Email: kiuchi.tai.6z@kyoto-u.ac.jp −5−

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