2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
124/206

ヘヘテテロロ元元素素埋埋めめ込込みみ型型曲曲面面ππ共共役役分分子子のの機機能能開開拓拓 京都大学大学院人間・環境学研究科 准教授 廣戸 聡 1. 研究の目的と背景 有機色素の基本構成要素であるπ共役分子は、分子 の構造および構成元素に影響を受け、その光・電子物性を変化させる。π共役分子は通常平面であるが、最近、曲面を骨格にもつπ共役分子の精密合成が盛んに行われている。その中で、我々は窒素原子を骨格に含む螺旋構造の「アザヘリセン」やお椀型構造の「アザバッキーボウル」という、これまで不可能であったヘテロ元素が骨格内部に導入された曲面分子の合成に成功してきた(図1)[1][2]。しかし、曲面構造におけるヘテロ元素の効果は未解明であり、曲面π共役分子の応用研究は未開拓と言わざるを得ない。そこで、我々が開発したヘテロ元素含有曲面π共役分子、アザバッキーボウルとアザヘリセンを基に、その機能化および大量合成に基づく材料展開を行うことで、ヘテロ元素含有曲面π共役分子の材料応用への道を切り拓くことを目的とし、研究を行っている。 図1. 我々の開発したヘテロ元素含有曲面分子 (a) アザバッキーボウル, (b)アザヘリセンの構造 具体的には、曲面π共役分子の構造を活かした分子配列制御、それに伴う導電性や刺激応答性材料の創出、さらに、新たなヘテロ元素含有型の曲面π共役分子の開発を本研究では提案している。今回は、螺旋型分子「アザヘリセン」について報告する。我々が開発したアザヘリセンは溶液・固体中で優れた発光を示すとともに、そのエナンチオマーは円偏光発光特性を示す。さらに最近、アザヘリセンに対し、位置選択的な置換基変換反応の開発に成功した[3]。そこで、本研究ではこの手法を用いてアザヘリセンの置換基による立体的な歪みを制御することで、ヘリセンの伸縮に伴う物性への影響を明らかにするとともに、固体中における分子の配列を制御することで螺旋の構造を活かした新たな機能が創出できると考え、研究を行った。 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 我々が開発したアザヘリセン(11)は螺旋の内側および外側にシリル置換基をもつ。化合物11に低温条件でBu4NFを作用させると、選択的に外側のシリル基のみ脱離できることをすでに報告している。そこでまず、この手法を用いて化合物1の外側の置換基を3,5-di-tert-butylphenyl基に変換した化合物2と、さらに内側の置換基も3,5-di-tert-butylphenyl基に変換した化合物3を合成した。同様の手法を用いて、トリエチルシリル基をもつアザヘリセン(4)の外側の置換基を3,5-di-tert-butylphenyl基に置換した化合物5も合成した(図2)。化合物2と化合物5の構造はX線構造解析により明らかにし、内側の置換基の立体的な大きさによって螺旋のピッチが変化することを明らかにした。 図2. 合成したアザヘリセン類縁体の構造 次に化合物1, 2, 3, 5について光化学特性の比較を行った。定常状態では吸収スペクトルにおいて、化合物3が他の化合物に比べて吸収帯の長波長シフトが観測された。これはπ共役系の拡張に起因するものと示唆された。一方、一電子酸化状態では逆に化合物3は他の化合物に比べて短波長シフトすることが分かった(図3)。 顔写真 25mm× 30mm程度 (a)(b)NHR’R’tButButButBu2: R’ = SiiPr33: R’ = 3,5-di-tert-butylphenyl5: R’ = SiEt3NHSiR3R3SiSiR3R3Si1: R = SiiPr34: R = SiEt3−118−発表番号 59 〔中間発表〕

元のページ  ../index.html#124

このブックを見る