2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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細細胞胞内内ゲゲノノムムDDNNAA及及びびRRNNAAをを標標的的ととししたた光化学的なピピンンポポイインントト塩塩基基編編集集 にによよるる遺遺伝伝子子治治療療法法のの開開発発 北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授 藤本 健造 1. 研究の目的と背景 ヒトゲノム計画によりヒトの全ゲノム配列が解読され、様々な遺伝子疾患とその原因変異の関係が明らかになりつつ有る。また、遺伝子疾患の治療のため、様々なアプローチが考えられているが、中でも原因となる変異を位置選択的に修復することができれば遺伝子疾患の治療法として有用な技術となると考えられる。申請者は光可逆的核酸類操作法を用いたシトシンからウラシルへのピンポイント変換を報告している1。 平成27年、28年度に助成をいただき、細胞内で実現可能なシトシンからウラシルへの光化学的変換に関する知見を得た。本研究では細胞内の特にゲノムDNA及びRNAを標的としたピンポイント遺伝子編集を検証する(図1)。また、そのための要素技術開発を同時に行い、ゲノムレベルでの光化学的遺伝子治療法の開発を目的とする。 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 細胞内核酸類光操作に向けて、光毒性の少ない操作波長の長波長化を行った。光毒性の少ない可視光で操作可能な新規光架橋素子としてピラノカルバゾールヌクレオシド(PCX)を設計・合成した。2-ヒドロキシカルバゾールを出発物質とし、エチルプロピオレイトを用い、環化させ、ピラノカルバゾールを得た。その後、リボースとカップリングさせた後、常法に従い、トリチル化、アミダイト化を行った。アミダイト体は総収率3%でアミダイト体を得た。その後、DNA 合成基により PCX を含むオリゴDNAを得た。PCXを含むODN1(5’-TGCAPCXCCGT-3’)と相補鎖cODN(5’-ACGGGTGCA-3’)を混合し、400 nmの光を10 秒照射することにより、 相補鎖中のピリミジン塩基と光架橋することを見出し た2。また、450 nmの光を5分照射する事により光架橋可能であり、可視光で操作可能な新規光架橋素子の開発に成功した(図2)。本反応は光可逆性を有していること、光架橋体のNMRより、[2+2]光環化反応により標的チミンと光架橋していることを確認した。 次に、シトシンからウラシルへの変換過程には37°Cで1週間程度要する。そこで、より短時間での塩基変換を志向し、リン酸基を末端部に固定した脱アミノ化用プローブを用いることで脱アミノ化を大きく加速し、37°C条件下24時間で80%以上のシトシンをウラシルへ変換できることを見出した3。リン酸基の付与による親水性の向上がシトシンの脱アミノ化を向上していると考えられる。また同時に ホスホロチオエイト化した際にも同様に脱アミノ化の加速が確認されている。標的が RNA 1化学的あるいは酵素を用いた人工的な位置選択的変異導入は遺伝子治療ならびに非天然タンパク質合成に有用である.しかし,これら化学試薬あるいは酵素を用いた手法はそれらを用いるために至適pH,至適温度,至適塩強度の条件下で用いる必要があった.これら制約条件から解放されたより汎用性の高い手法として.既に我々はが光可逆的核酸類操作法を基盤とした一塩基変異法を開発指定入る.ただ,この方法ではシトシンからウラシルへのピンポイント変異反応に90度で3時間以上加熱する脱アミノ化過程が存在するため,実際に細胞内での操作を考えると実用的に困難であった.そこで,生理的条件下で,全て光操作のみで細胞内DNA及びRNA上のシトシンをウラシルへとピンポイント変異させる今までにない分子操作法の開発を行った.The development of artifitail chemical or enzymatic editing induced site-specific mutation will be a powerful tool for creating non-native proteins and treatment of genetic diseases. However, these chemical and enzymatic method requires careful optimal conditions such as temperature, pH, and salt concentration. Free from such, constrain, we have reported ultrafast photo-cross-linking reaction using 3-cyanovinylcarbazole (CNVK) which can cross-link to complementary DNA or RNA with 366 nm irradiation for a few second in previous literature. The photo-cross-linking between C and CNVK was induced C-U transition, although this reaction required heating at 90 degree for 3 h. This prevents the application for DNA and RNA manipulation in living cells by using these method. To overcome this advantage of the photochemical C-U transition, we designed and demonstrated novel photochemical C-U transition via photo-cross-linking between 3-vinylcarbazole derivatives to use in living cells.遺伝子治療を指向した化学と生命科学の融合による細胞内RNA上のシトシンをウラシルへ変換する手法論の開発Development of cellular RNA C-U transition toward for gene therapy by fusion of chemistry and life science藤本 健造Kenzo FujimotoNo.##第1-研究奨励北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 教授School of Materials Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology, ProfessorEmail:kenzo@jaist.ac.jp図2. ピラノカルバゾールを用いた光架橋反応 ,8(90°C)37°C8(H27,28)8()5’3’5’3’CytosineUracilDNARNA図1. シトシンからウラシルへのピンポイント塩基変換 図3. リン酸基導入による加速効果 PCX400 nmODN 1ODN 2光架橋体(*) 90°C37°C3 days, 35% (H27,28)3377°°CC2244(ChemBioChem, 22001188, 19(21), 2257-2261.)RNA2490% 90°C37°C3 days, 35% (H27,28)3377°°CC2244(ChemBioChem, 22001188, 19(21), 2257-2261.)RNA2490% 90°C37°C3 days, 35% (H27,28)3377°°CC2244(ChemBioChem, 22001188, ), 2257-2261.)RNA2490% 90°C37°C3 days, 35% (H27,28)3377°°CC2244(ChemBioChem, 22001188, , 2257-2261.)RNA2490% 90°C37°C3 days, 35% (H27,28)3377°°CC2244(ChemBioChem, 22001188, 19(21), 2257-2261.)RNA2490% 約800倍加速−120−発表番号 60 〔中間発表〕 

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