2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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の際にも 24 時間で 90%以上の脱アミノ化が確認されており、リン酸基の付与によりシトシンの脱アミノ化を大きく加速できることを見出した(図3)。 細胞内 RNAの光操作に向け、細胞内mRNA を標的としたアンチセンス効果の検証をおこなった。GFP mRNA に対するアンチセンス核酸を合成し、GFPを定常発現する HeLa細胞内に導入した。アンチセンス核酸には光架橋能を有する人工核酸である 3-シアノビニルカルバゾールヌクレオシド(CNVK)とそのトレオニノール誘導体であるCNVD、また、従来から光架橋型核酸として知られているソラレンを導入した。アンチセンス核酸導入後、光照射を行った後、RNAを抽出し、qRT-PCRによる解析を行った。その結果、最も光架橋速度の速いCNVDを用いた場合に 90%以上の遺伝子発現を抑制しており、光架橋速度が速ければ速いほど遺伝子抑制効果が高いことを見出した(図4)。次に、光照射エネルギーによる発現抑制効果を検証した。その結果、照射エネルギーにより発現量を制御できることを見出した4。これらの結果から、光照射による遺伝子発現量の時空間的な制御が可能となった。 ゲノムDNAは細胞内で二本鎖を形成しており、核酸プローブを用いた操作には二本鎖構造にインベージョンする必要がある。しかし、ゲノム DNA は長鎖の安定な二本鎖を形成しており、核酸プローブのインベージョンは非常に困難である。我々は超高速光架橋反応を用いた Photo-induced double duplex invasion(pDDI)を報告しており、長い二本鎖 DNA にも核酸プローブを導入することができる。しかし、その効率は 50%程度とあまり高くない。これはプローブ同士の光架橋を抑制するため導入している5-cyanouridine(CNU)の光架橋抑制効果が完全ではなく、光架橋率は低いものの、長時間の光照射により光架橋反応が進行するためである。そこで、より高い収率でインベージョン可能な核酸プロ ーブの設計に向け、CNU、C3 Spacer(S)、dSpacer(D)を含む核酸プローブを設計し、光架橋反応抑制効果を 評価した。その結果、通常のチミンの場合には数秒の光照射により95%以上が架橋するのに対して、S,D を用いた場合に光架橋率が低くなることを見出した。そこで、実際の長鎖の二本鎖DNAに対するインベージョン効率を検証したところ、Spacerを導入することにより、60%近いインベージョン効率を実現した(図5)。 3. 今後の展開 化学的アプローチによる分子素子の長波長化や細胞内核酸の光操作が可能となった。今後、細胞内RNAを標的としたシトシンからウラシルへのピンポイント塩基変換をBFPmRNAの199番目のシトシンをウラシルへと変換することによりBFPからGFPへと変換可能な系を用い検証を進めていく。 4. 参考文献 [1] K. Fujimoto, K. Konishi-Hiratsuka, T. Sakamoto, Y. Yoshimura, Chem. Commun., 22001100, 46, 7545. [2] K. Fujimoto, S. Sasago, J. Mihara, S. Nakamura, Org. Lett., 22001188, 20, 2802. [3] S. Sethi, N. Honda, L. Wan, S. Nakamura, K. Fujimoto, ChemBioChem, 22001188, 19, 2257. [4] K. Fujimoto, H. Yang, S. Nakamura, Chem. Asian J., 22001199, 14, 1912. 5. 連絡先 住所:石川県能美市旭台1-1、電話番号:0761-51-1671 E-mail:kenzo@jaist.ac.jp X =光照射1 研究経過報告書(兼 継続申請書) イルをアップロードして下さい。 研究計画の大幅変更等がある場合は、必ず明記して下さい。 で表示し下さい。 学・生命 理・情報 築・都市 会科学 研究課題 細胞内ゲノムDNA及びRNAを標的としたシトシンからウラシルへのピンポイント塩基変換法の開発 名 科学技術研究科 教授 的としたピンポイント塩基変換法の開発に向け、2019年度は①細細胞胞内内核核NAを標的とするための②光光ゲゲノノムム操操作作法法にに向向けけたたププロローーブブ設設計計を行った。 け、細胞内ス効果の検対するアン定常発現すチセンス核である3-レオシド導体である核酸として。アンチセ後、RNAを行った。CNVDを用いた場合に90%以上の遺伝子発現を抑制しており、光架橋速度果が高いことを見出した。また、光照射エネルギーにより発現量を制御でる発現抑制効果を検証した。その結果、照射エネルギーにより発現量を制Asian J., 2019, 14, 1912)。これらの結果から、光照射による遺伝子発現量細胞内RNAを標的とした塩基変換の検証を進めていく。 a)CNVDb)CNVKc)Psoralend)UV(:)Amount,of,GFP,mRNA0,20,40,60,80,100,1,2,3,4,(a)(b) S-15 1H NMR spectrum of Compound 4 13C NMR spectrum of Compound 4 10987654321ppm0.9991.0153.3713.3843.3983.4763.4923.6273.6443.8994.6394.6534.6674.7124.7235.1425.1506.3936.4357.2517.2527.2707.2887.2897.4597.4627.4807.4837.4987.5017.5787.5997.6057.6277.7527.7597.7777.7817.7937.9557.9778.1378.1568.4798.4823.000.961.040.980.971.020.981.970.040.941.021.071.971.910.950.960.93Current Data ParametersNAME Oct17-2012 carbazolyl threoninolEXPNO 10PROCNO 1F2 - Acquisition ParametersDate_ 20121017Time 11.47INSTRUM spectPROBHD 5 mm PABBO BB-PULPROG zg30TD 65536SOLVENT DMSONS 16DS 2SWH 8223.685 HzFIDRES 0.125483 HzAQ 3.9845889 secRG 101DW 60.800 usecDE 6.50 usecTE 295.1 KD1 1.00000000 secTD0 1======== CHANNEL f1 ========NUC1 1HP1 13.00 usecPL1 -2.50 dBPL1W 15.18724251 WSFO1 400.1324710 MHzF2 - Processing parametersSI 32768SF 400.1300038 MHzWDW EMSSB 0LB 0.30 HzGB 0PC 1.0018016014012010080604020ppm20.30545.57755.89260.58863.98292.659109.959110.022119.610119.865120.330120.714122.090122.495125.157125.397126.379141.223142.301151.610167.213Current Data ParametersNAME Oct17-2012 carbazolyl threoninol 13CEXPNO 10PROCNO 1F2 - Acquisition ParametersDate_ 20121017Time 19.58INSTRUM spectPROBHD 5 mm PABBO BB-PULPROG zgpg30TD 65536SOLVENT DMSONS 1024DS 4SWH 24038.461 HzFIDRES 0.366798 HzAQ 1.3631488 secRG 71.8DW 20.800 usecDE 6.50 usecTE 297.2 KD1 2.00000000 secD11 0.03000000 secTD0 1======== CHANNEL f1 ========NUC1 13CP1 9.80 usecPL1 -2.00 dBPL1W 57.32743073 WSFO1 100.6228298 MHz======== CHANNEL f2 ========CPDPRG[2 waltz16NUC2 1HPCPD2 75.00 usecPL2 -2.50 dBPL12 12.72 dBPL13 15.70 dBPL2W 15.18724251 WPL12W 0.45654005 WPL13W 0.22986822 WSFO2 400.1316005 MHzF2 - Processing parametersSI 32768SF 100.6128154 MHzWDW EMSSB 0LB 1.00 HzGB 0PC 1.40NNHOOHHOCNNNHOOHHOCNCNVD(D)CNVK(K)Psoralen(P)GFP!mRNA!XXGFP0HeLa!cell!(AS)図4. 細胞内RNAの光操作 図5. 二本鎖DNAに対する光操作法 −121−

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