2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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た。1次試作の検証の結果、2次試作を行っており、アナログ信号処理回路と無線送信回路は一体型基板とし、またセンサ部も小型化している。2次試作でのセンサ部のサイズは8x10mmであり、1次試作のおよそ半分である。アナログ信号処理回路無線送信回路一体型基板のサイズは64x24mmであり、1次試作のおよそ4分の1のサイズである。 ウシに装着させた場合、1次試作ではバッテリーとその他基板を背中に取り付ける状態であったが、2次試作においては尾根部に取り付けることを可能とした(図3)。2次試作の無線センサ端末では、ウシは自由に動き回ることが出来る。また1週間以上の実験を行うことも可能であった。 図4に呼吸数を検出した信号を示した。2.1秒以上の揺らぎが周期的に検出されている。平均すると1分間に25回程度の呼吸数となる。 心拍数を正確に測定する機器は心電計である。ウシでの装着試験では、心電計と2次試作した無線センサ端末を同一個体に取り付け比較評価している。呼吸による揺らぎを排除した測定信号において、ある一定区間での心電計から測定した心拍間隔変動値(1拍毎の秒数)と、センサから測定した心拍間隔変動値を比較している(図5)。以上より、今回試作したセンサ端末は、心拍数(1分間の平均の拍動数)は心電計と同等の値を測定可能である。しかしながら、心拍間隔変動値(1拍ごとの秒数)は、その差が大きく、瞬時の心臓の変動を捉えることは出来ていない。 3. 今後の展開 ウシの尾に装着可能なウエアラブルな無線センサ端末により、呼吸数の推定や心拍数の測定に成功している。一方で心拍間隔変動値(1拍毎の秒数)については、精度の向上が必要である。この一つの原因として、体動が起こった場合に脈波信号が乱れてしまうことが挙げられる(図6)。この対策として、ウシの尾の皮膚の硬さおよびセンサの特性を考慮した装着機構が必要である。今後は、センサと機構を融合させたウシの尾一体型無線センサ端末を試作することで、心拍間隔変動値の精度向上を実現する。 4. 引用文献 [1]Nogami, H., Okada, H., Miyamoto, T., Maeda, R., & Itoh, T. (2013). Wearable and compact wireless sensor nodes for measuring in temperature of the base of a calfʼ s tail. Sens. Mater, 25(9), 577-582. [2]Nogami, H., Okada, H., Miyamoto, T., Maeda, R., & Itoh, T. (2014). Wearable wireless temperature sensor nodes appressed to base of a calf's tail. Sens. Mater, 26, 539-545. [3]Miura, R., Yoshioka, K., Miyamoto, T., Nogami, H., Okada, H., & Itoh, T. (2017). Estrous detection by monitoring ventral tail base surface temperature using a wearable wireless sensor in cattle. Animal reproduction science, 180, 50-57. 5. 連絡先 819-3095, 福岡県福岡市西区元岡744、九州大学大学院工学研究院、機械工学部門、nogami@mech.kyushu-u.ac.jp 図3 ウシでの装着風景 図4 呼吸数を検出時の信号 図5 同時刻での心電計とセンサとの心拍間隔変動値の比較 図6 静止状態の脈波信号(右)とウシが動いているときの信号(左) −127−

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