2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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光光信信号号処処理理にによよるる類類似似度度計計算算をを用用いいたた光光パパケケッットト技技術術 沖縄工業高等専門学校 情報通信システム工学科 助教 相川 洋平 1. 研究の目的と背景 現在,インターネットにおけるトラフィックは劇的な増加傾向にある.これを支える情報インフラストラクチャーが光通信ネットワークであり,ここでの消費電力はその90 %がトラフィックの経路選択において発生している.そのため,ますます増加するトラフィックは,ネットワーク電力の更なる増加をもたらすと懸念されている.このような状況を踏まえて,パケット処理における電気処理を光処理に置き換える取り組みが,国内外の研究機関において広く検討されている[1-3]. 図1に,我々が対象とする光信号処理を用いたパケットスイッチの模式図を示す.スイッチではパケットのラベルに応じて経路が選択される.そのため,一般的にはラベル候補を保存しておくメモリが不可欠となる.これに対して,光のままで候補ラベルとの類似度を計算できたならば,メモリ機能を光処理にて代替できるものと考えた.提案手法は,光信号が素子を伝搬する過程で演算が完了することを特徴としている.また,光電変換を伴わないため消費電力を必要としない.すなわち,光の高速性・低電力性を活かした抜本的に新しい技術だといえる.そこで,光処理での類似度計算技術に着目し,当該技術の動作実証に取り組んだ. 図1 提案する光パケットスイッチ技術の模式図 2. 研究内容 提案手法は,時系列な光信号を同一タイミングにて合波させ,その複素座標に基づいて類似度を推定するものである.ここでは具体的な説明を省略するが,推定対象として選んだ符号に基づいて,光信号に特殊な位相回転を施す必要がある.なお,提案手法は任意の符号長に対しても適応できることが示されている[4]. 図2に,4-bit QPSK信号を対象とした類似度計算デバイスの顕微鏡写真および模式図を示す.当該デバイスはシリコン細線導波路によって構成されており,0.1×2.0 mm2 サイズの矩形型である.また,1入力-2出力の遅延干渉計構造となっている.デバイス内部では,入力された光信号は等分岐し,片側が1シンボル分の遅延を受けた後で合波される.このとき,2シンボルからなる4-bit QPSK信号は同一タイミングにて重ね合わされる.また,位相シフタを用いて各シンボルに対して位相回転を施すことができる.これにより,類似度計算の対象である4-bit符号系列を任意に設定することができる. 図2 シリコン細線導波路からなる類似度計算デバイス 図3に,類似度計算デバイスにおける透過スペクトルおよびインパルス応答の測定結果を示す.図3より,当該デバイスは10.6 dBの消光比および 10 GHzの自由スペクトル領域を有していることが分かる. 図3 基本特性:(a)透過スペクトル,(b)インパルス応答 10 01Comparison in parallel10 01Switching00 0000 01:10 01MismatchMismatch:MatchdownupInputVsVpVSOCDelay linexzy2.0 mm0.1 mmWavelength (nm)0.000.010.020.030100200300400500Time (ps)101 ps(b)Transmittance (dB)Intensity (a.u.)-30-20-1001549.915501550.1(a)up portdown port−130−発表番号 64 

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