2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
139/206

図1実験結果(1) ークBのキュリー温度はTC ~ 25 K程度であると推定できた。一方ピークAの方は25 K以上でも緩やかに強度が下がっており、常磁性成分と考えられる。 以上の結果をまとめると、Mn,Te/Bi2Te3の系において磁性に関係しているMnが2種類存在し、一つはTC ~ 25 Kの強磁性的、もう一つは常磁性的であることが分かった。また強磁性成分では負のヒステリシスが観測され、通常の強磁性体ではないことが推定された。そしてXMCD総和則による定量的解析から、8 T、6 Kにおける平均スピン磁気モーメントは0.6 µB/Mn、平均軌道磁気モーメントは0.04 µB/Mnと導出された。これは強磁性や常磁性のMnだけから想定される値よりも小さく、反強磁性のMnが存在していることを示している。事実プロテリシスや負の残留磁化は微粒子などにおいて、強磁性成分とそれ以外の成分の反強磁性的な交換相互作用の結果生じると報告されている。[4]。今後、反強磁性成分や反強磁性的相互作用が存在するかを実験的に検証する必要がある。 最後にMn,Te/Bi2Te3の系におけるディラックコーンギャップと磁化特性の関係について議論する。上述の 図2実験結果(2) 通り、ギャップは200 Kまで存在したが、強磁性は25 Kまでしか観測されていない。反強磁性成分が存在しておりそのネール温度が200 Kであるかもしれない。あるいはスピンの長距離秩序がなくても、ミクロな短距離の局在スピン間の相互作用による時間反転対称性の破れにより、ディラックコーンにギャップが開き得ることを示唆している。例えば強磁性成分の短距離秩序が200 Kまで存在している、あるいは試料内のMn同士が反強磁性的に相互作用をしており、そのエネルギースケールが200 K程度の可能性がある。今後このMn,Te/Bi2Te3の構造を明らかにし、理論計算と組み合わせてギャップの起源に迫っていきたい。 3. 参考文献 [1] M. Mogi et al., Applied Physics Letters 110077, 182401 (2015). [2] T. Hirahara et al., Nano Letters 1177, 3493 (2017) [3] T. Hirahara et al., to be published. [4] R. K. Zheng et al., Jour. Applied Physics 9966, 5370 (2004). 4. 連絡先 hirahara@phys.titech.ac.jp(a)(b)L3L2L3Tc ~ 25 K(a)(b)−133−

元のページ  ../index.html#139

このブックを見る