2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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最最適適軌軌道道ののススパパーースス性性にに着着目目ししたた宇宇宙宙機機のの軌軌道道設設計計 九州大学大学院工学研究院 准教授 坂東 麻衣 1. 研究の目的と背景 宇宙機を最小の燃料で所望の軌道へ移行させる問題は古くから研究が行われてきたが,近年,宇宙機が宇宙空間において行うミッションの高度化・多様化から,その軌道への要求が高くなり,従来の軌道最適化手法では 最小燃料 軌道を求めることができない問題が多く存在している.その中の一つに ,重力を及ぼす天体が 2つの問題である三体問題がある[1].三体問題 における宇宙機の運動には解析解が存在せず,非常に複雑なダイナミクスを示すため,最小燃料軌道を設計するのは困難である.一方,スパース性 という画像処理などの情報工学の分野で用いられている概念があり,近年,宇宙機の軌道のような動的なシステムの最適化においても,スパースな解構造が現れることが分かってきた[2,3].これは,消費燃料が最も少ない軌道は,推力を使う区間が最小になる という性質に対応しており,軌道の最適化とは親和性が高いと考えられる. しかしながら, 三体問題のような 非線形性の強い力学系においてスパース性を利用した最適化の手法が適用された例はない.本研究では,太陽-地球系の三体問題における平衡点周りに生成されるHalo軌道間をスパース最適制御によって遷移させる問題を考える.非線形性の強い力学系においても適用可能な最適軌道設計法を構築するのと同時に,三体問題における最適軌道のスパースな解構造を明らかにする. 2. 研究内容 円円制制限限三三体体問問題題 質量が!,"(!>")の天体!,"からの引力を受けて運動する質量の天体#の運動を考える.が!,"に比べて十分小さい時,!,"の運動はそれらの二体問題として記述される.このような制限付きの三体問題は制限三体問題と呼ばれる.特に,!,"が円運動をする場合を円制限三体問題という.この時,!,"の共重心に原点を持ち,!から"へ向かう方向に軸を持つ回転座標系において,#の運動方程式は系のポテンシャルを用いて式(1)のように表される[5]. ̈−2̇=+$ ̈+2̇=+% ̈=+& (1) ここで,この系は,!,"間の距離,!,"の質量和,角速度が1となるように無次元化されており,円軌道の周期は2πとなる.5$,%,&6は制御入力を表している. 状状態態方方程程式式のの離離散散化化 halo軌道上での線形時変システム行列()と入力行列を点に離散化する.離散化の幅は,ℎに関して等分であるため,ℎ=/となる.'を起点として離散時刻(='+ℎを定める.点に離散化したうちの番目の時刻(から,ℎ進んだ時のシステムの変化を考える.まず,式(7)を満たす6×6の行列値関数(()を考える.ここで,((0)=*×*である. ,()=((+)() (0≤≤ℎ) =1,2,3…−1, (2) =ℎにおけるこの関数の値を式(8)のように離散化後のシステム行列とみなす. -()=((ℎ) (3) 次に,離散化後の入力行列を求める.式(9)を満たす6×3の行列値関数Ψ(()を考える.ここで,Ψ((0)=*×#である. Ψ(,()=((+)Ψ(()+ (4) =ℎにおけるこの関数の値を式(10)のように離散化後の入力行列とみなす. -()=Ψ((ℎ) (5) 以上より,Halo軌道に対する離散化した宇宙機の状態方程式は式(11)となる. 顔写真 25mm× 30mm程度 −138−発表番号 68〔中間発表〕

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