2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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伝伝統統木木造造躯躯体体ににおおけけるる篏篏合合型型接接合合部部ののポポジジシショョニニンンググとと復復元元力力のの発発現現 東京都立大学大学院都市環境科学研究科 准教授 多幾山法子 1. 研究の目的と背景 過去の地震により,多数の伝統木造建物では接合部に起因する被害事例が報告されている。接合部の地震時挙動を精度良く評価することが建物の耐震性評価に密接に関係するが,各々が独特の構造仕様を有しており,評価が非常に難しい。 地震応答解析をする場合,接合部の6成分のバネ(引張・せん断2方向・回転2方向・捩り)に適切な復元力特性を与える必要がある。接合部の力学特性に関しては,多数の既往研究において軸方向引張と面内方向の曲げに着目した実験や評価が行われている。しかし,様々存在する接合部形状に対して,各バネの復元力特性が正負対称であるとは限らない。 以上を踏まえ,本研究は,伝統木造建物の接合部に関して様々な条件下で生じる破壊現象を明らかにし,地震時挙動を把握するための一連の検討を行うものである。本報では,非対称性形状の継手の復元力の方向性の明確化と性能評価を目的とした要素実験,および,躯体の中での位置取りや軸力変動など異なる条件下での仕口の復元力特性を評価可能な手法を構築するための要素実験と架構倒壊実験を実施する。 2. 研究内容 2.1 横栓車知継ぎ接合部の引張試験 横栓車知継ぎ接合部は,図1のように女木のほぞ穴に男木の竿部を組み合わせ,上から2本の車知栓で固定し,側方からは横栓が差し込まれている。車知栓以外の寸法を統一し,車知栓の幅と厚さをパラメタとした接合部4種類を設計する。母材はスギで105×150mmの断面とする。車知栓はカシで,幅35, 50mm,厚さ4, 8mmを組み合わせた4種類とする。車知栓の幅と厚さより,各接合部を継手35-4,35-8,50-4,50-8と呼ぶ。なお,女木のほぞ穴の男木側を先端,逆側を根元と呼ぶ。 図2に示す加力・計測システムを用い,単純引張加力を実施する。継手を中央に設けた試験体の男木側を鉄骨に固定し,女木側は油圧式ジャッキに接続する。 また,既往の推定式を参考に,様々な破壊モードを想定し,耐力評価式を導出した。 35-4の結果を図3,4に示す。引張変位2.5mmで男木側の車知栓に,3.5mmで女木側車知栓に亀裂が生じ,両車知栓は変位が進むにつれて女木にめり込みながら歪みが進展した。 全試験体の評価は,概ね実現象に対応していたが,竿幅に対する車知厚さの比が大きくなれば推定誤差が大きくなる。 図1 横栓車知継ぎ接合部 図2 加力システム 024680246810Test resultEstimated valueTensile force (kN)Displacement (mm)M1 図3 損傷(35-4) 図4 引張荷重-変位関係 図5 加力システム 00.511.500.050.10.150.20.250.3Test resultEstimated valueBending moment (x103kNmm)Rotation angle (rad)M1▽[M10,M11]▽[M16] 図6 損傷(BY35-4) 図7 M-θ関係(BY35-4) 2.2 横栓車知継ぎ接合部の曲げ試験(2方向) 前節の継手4種類の試験体に対して曲げ試験を実施する。方向性を把握するため,車知栓に平行な向きに加力するBYシリーズと,横栓に平行な向き加力するBZシリーズを実施する。 中央に継手を設けた長材に対して,曲げ方向の異なる2パターンの4点曲げ試験を行うため,BYシリーズの試験体は全長2400mm,BZシリーズは1680mmとする。 横栓女木男木車知せん断方向Displasementtransducer変位計Strain gaugeひずみゲージLoading加力plus正Displasement transducer変位計150150525525525525(a) Series BY BYシリーズ150Strain gaugeひずみゲージ105105105367.5367.5367.5367.5Loading加力(b) Series BZ BZシリーズplus正顔写真 25mm× 30mm程度−154−発表番号 75

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