2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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加力・計測システムを図5に示す。BYシリーズの試験体は上方から,BZシリーズの試験体は横伏して単調加力する。 BY35-4の結果を図6,7に示す。なお,提案評価式を用いた推定値も掲載している。最大曲げモーメントに達した後,脆性破壊した。他の試験体も同様の脆性破壊が生じた。また,車知栓厚さが等しい試験体の骨格曲線が類似の形状を描いていた。車知栓が薄い方が最大曲げモーメントは高く,脆性破壊する接合部回転角も大きく変形性能が高い傾向がみられた。 2.3 柱-差鴨居接合部の曲げ試験 柱-差鴨居接合部の仕口形状,材種やプロポーションをパラメタとした試験体に対して静的加力実験を実施する。試験体は柱(スギ)と差鴨居(ベイマツ)で構成される逆T字型とし,仕口形状は「半ホゾ込栓留め」,「全ホゾ込栓留め」,「引き独鈷車知栓」,「下げ鎌楔」の4種類を選定する。込栓はベイマツ,引き独鈷はスギ,車知栓はカシ,楔はベイマツとする。プロポーションは図8の2種類とする。‘標準モデル’および,差鴨居の配置高さ,断面欠損の大小や材種を変化させた試験体を‘変形モデル’とし,計8体の試験体を設計する。 試験体は柱が水平,差鴨居が鉛直になるよう設置し,柱両端をピン及びピンローラーとして鉄骨架台に取り付ける(図9)。アクチュエータ先端に差鴨居をピン接合して加力する。アクチュエータの変位を差鴨居の内法高さで除した値を試験体変形角と定義し,正負交番二回繰返加力を実施する。また,柱芯と差鴨居芯の交点には,試験体と非接触のピンを設け,これと加力点をロードセル付きPC鋼棒で連結した。差鴨居に傾斜が生じた際には,幾何学的に柱に曲げ変形が生じ,差鴨居に軸力が発生し,実架構で生じる現象を模擬するシステムとする。 更に,差鴨居に生じた軸力の影響を考慮した復元力特性の推定式を提案する。また,提案推定式を用いた評価値と実験値の対応を確認し,推定精度を確認する。また,解析モデルを構築し,実験シミュレーションとして変位増分解析を行う。 半ホゾ込栓留め標準モデルの結果を図10,11に示す。なお,提案評価式を用いた推定値,およびシミュレーション解析結果を実験値と比較して掲載している。 正側0.11radで最大モーメントを示した。変形モデルであってもM-θ関係に大きな差異は見られなかった。損傷は込栓の破断と柱の込栓穴の割裂であった。一方,軸力は大きく異なる。仕口形状が同一であっても,プロポーションが異なると,接合部の復元力特性に影響を及ぼす要因が異なった。評価値とシミュレーション結果は,復元力,軸力共に概ね良く対応している。 図8 標準モデル(左)・変形モデル(右) 図9 加力システム 図10 M-θ関係 図11 軸力変動 図12 損傷(1/10rad) 図13 水平荷重-層間変形角関係 2.4 2スパン実大差鴨居架構実験 差鴨居がせん断抵抗型要素(土壁)に隣接する場合の差鴨居の挙動を把握するため,2スパン実大差鴨居架構実験を実施した。軸組の基本寸法は1820×2730mmとする。柱頭柱脚のほぞは,長ほぞ込栓留め,差鴨居接合部は半ホゾ込栓留めとする。 試験体土台はアンカーボルトで鉄骨架台に緊結し,試験体頂部に水平力を与える。上載荷重は柱1本あたり1tとする。 実験結果を図12,13に示す。正側1/50radで両面の土壁中央にひび割れが生じた。負側1/50radでは上部と下部の横貫に沿った形で両面の土壁にひび割れが生じた。正側1/25rad以降に差鴨居接合部両側の込栓が折損し,正側1/10radでは中柱柱脚のほぞが折損した。負側1/10radでは後柱柱頭が繊維方向に割裂し,両面の土壁の概ねが剥落した。 3. 今後の展開 1) 横栓車知継ぎ接合部の提案耐力推定式の更なる精度向上を目指す。残り3成分のバネに関しては今後検討する。 2) 本研究での柱-差鴨居接合部の復元力推定式を,架構に拡張した場合の差異を明確にする。 3) 2スパン実大架構実験結果を詳細に分析し,接合部周辺条件による,軸力や仕口まわりの曲げモーメントなど現象の差異を定量的に示す。また,現行の耐震診断で扱われているせん断力の設定について修正提案をすることを目指す。 4. 連絡先 〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1,9号館772室 Email / norikot@tmu.ac.jp TEL & FAX / 042-677-2801 参考文献 1) 井立直人,多幾山法子:大断面横架材を有する2スパン伝統木造軸組の耐震要素配置と力学特性,日本建築学会構造系論文集,第82巻,No.732, 2017.2. 2) 北守顕久,野村昌史,稲山正弘,後藤正美:雇い竿車知栓留め柱-梁接合部の引張性能評価式の提案:伝統構法における雇い竿車知栓留め柱-梁接合部の力学性能 その1,日本建築学会構造系論文集,第79巻, 第695号, pp.93-102, 2014.1. 3) 横田治貴,多幾山法子,林康裕:伝統構法木造建物における柱梁接合部の復元力特性評価に関する実験的研究,日本建築学会技術報告書,第21巻,第48号,pp.579-584,2015.6. 850L1=290H=270L2=880850L1=290H=270L2=880Hydraulic JackLoad CellPin-Roller JigPin JigColumnLoading Direction++--RodSASHIGAMOI-0.2-0.100.10.2Joint Rotation Angle (rad)-4000-3000-2000-100001000200030004000T1 Hysteresis LoopsT1 Analysis ValueT1 Evaluation Value-0.2-0.15-0.1-0.0500.050.10.150.2Joint Rotation Angle (rad)051015T1 Hysteresis LoopsT1 Analysis ValueT1 Evaluation Value−155−

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