2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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福福島島県県浜浜通通りり地地域域をを対対象象ととししたた復復旧旧・・復復興興市市街街地地のの形形成成とと相相補補関関係係をを構構築築ししたた持持続続可可能能なな市市街街地地整整備備にに関関すするる研研究究 福島工業高等専門学校都市システム工学科教授 齊藤充弘 1. 研究の目的と背景 福島県浜通り地域は,原発事故による避難者に加えて,復旧・復興事業に携わる技術者や作業員などの流出入により,いわき市を中心に人口と土地利用が大きく変化した。大震災後は,国や県,市町村単位で復興計画を策定し,新たな市街地を整備してきているが,市町村ごとの個別の計画立案であり,浜通り地域としての一体的な観点に欠けている。復興からの発展にむけては,大震災後の環境変化による市街地形成と既成市街地の実態を踏まえた上で,地域内の市街地が相補関係を構築する持続可能な市街地整備が求められる。 本研究は,いわき市における復旧・復興期の市街地形成に着目した,人口および土地利用の変化とその特徴を明らかにすることを目的とする。その上で,浜通り地域における市街地どうしが相補関係を構築した持続可能な市街地整備のあり方を提示していこうとするものである。 2. 研究内容 (1)地区単位にみる総人口・世帯数の変化と特徴 大震災前の2010年のいわき市の総人口は342,249人で,大震災後の2015年には350,237人と7,988人(2.3%)増加した。国勢調査ベースでは1995年の360,598人をピークとして減少していた人口が,大震災後は原発事故による避難者の受け入れなどにより,増加に転じたということができる。 人口変化を13の地区でみると,小名浜(7.3%)や平(4.6%)などの市街地地域の5地区で増加した。一方,周辺拠点地域や中山間地域の8地区では減少しており,中山間地域では世帯数も減少し,大震災前よりも減少率が高くなっている。 (2)年齢別人口にみる特徴 年齢(5歳階級)別人口について2010年-2015年のコーホート変化率を求めてみると,その値が1.00以上を示す階級は5~14歳と25歳~69歳であり,高校生や大学生の世代を除く,年少人口と生産年齢人口が市外から流入する形で増加したことがわかる。 (3)小地域単位にみる人口・世帯数の変化の特徴 2,483の小地域の2010-2015年の変化数は,人口が平均2人(標準偏差49),同じく世帯数は4(同21)である。人口が増加したのは918(37.0%)あり,このうち世帯数とともに増加したのは773(84.2%)ある。一方,人口が減少したのは1,431(57.6%),増減なしが134(5.4%)で,全体として減少した地域が多い。 その特徴を図1にみると,平や小名浜の市街地地域を中心に増加を示している。また,郊外の住宅団地や北部の久之浜・大久地区の行政区域境界付近の地域で増加を示している。人口と世帯数ともに平均+標準偏差(2+49=51,4+21=25)の値以上に変化した「著しく人口が増加した小地域」は110ある。その場所を分析してみると,応急仮設住宅立地地域が11,災害公営住宅および復興公営住宅立地地域が10,雇用促進住宅および市営住宅立地地域が8,住宅団地が27,既成市街地地域が49と5つに分類することができる。また,市街化調整区域や都市計画区域外も5地域ある。住宅整備戸数と世帯の変化数との相関係数は,応急仮設住宅立地地域0.90,災害公営住宅および復興公営住宅立地地域0.85と高い値を示しており,避難者の受け入れに伴い人口が増加したことがわかる。市街化調整区域や都市計画区域外に該当する地域では,既存の建物利用や新設による建設会社の宿舎をみることができる。 凡例増加減少変化なし図小地域単位にみるいわき市の人口変化()−156−発表番号 76

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