2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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人人とと住住ままいいのの自自助助・・共共助助促促進進ののたためめのの安安全全・・健健康康・・エエココ見見守守りりシシスステテムムのの開開発発 工学院大学建築学部教授 中島裕輔 1. 研究の目的と背景 核家族化が進み、独居高齢者も増加している現代社会では、災害時のみならず、熱中症や風邪の予防など日常的な安全・健康の確保にも、本人の気づきと家族や周囲の見守りによる自助・共助の仕組みが必要と言える。一方、住宅の空き家問題や改修需要の拡大とともに、インスペクションの評価手法の確立が課題となっており、今後は、構造の安全性だけでなく、住まいを長く健康かつエコに維持する視点が不可欠である。 本研究は、人の安全と健康を守り、その住まいを省エネで長持ちさせるために、室内環境情報は居住者に速やかに分かりやすく伝え、住宅の診断結果などの耐久性に関わる情報は設計者や施工業者と共有できるような一体型の見える化システムの開発を行い、その有用性の検証を行ったものである。 2. 研究内容 2.1製作した環境情報見える化システムの概要 図1に開発システムの概要を示す。室内外の温湿度やCO2、粉塵濃度、電力等をリアルタイムで計測し、1分間隔で親機ユニットを経由して、サーバーに蓄積される仕組みである.各センサは簡易に設置が可能である。 図2にスマートフォン用の見える化サイトの画面を示す。トップ画面ではセンサのリアルタイム情報全てを確認でき、過去データをグラフで確認できるページも製作している。日常的に行うことができる環境調整・省エネ行動の豆知識・アドバイスの表示や、熱中症や換気などの環境注意報画面も用意し、自宅環境を簡易に評価することができる。サイトとは別に、室内外の環境をサイトを見ずに視覚的に把握できるLEDインジケータも設置している。さらに、即時性の高い見える化サイトを補完し、過去の自宅の省エネ性や快適性を振り返ることができるツールとして、「週間環境レポート」を製作して、夏期及び冬期に紙面での配布を行った。 2.2環境情報見える化システムの運用実験 (1) システム運用実験概要 表1に被験者・住宅概要を示す。A~K邸は2017年7 月頃、L~U邸は2018年7月頃より設置を行った。 図1開発システム構成図 図2見える化サイト画面例 表1被験者・住宅概要 さいたま市緑区の住戸の多くはスマートホームモデル住宅街区内にある、HEAT20のG2を満たす高断熱仕様の新築住戸で子育て世帯が中心であり、2018年設置住宅は築年数にばらつきがあり、高齢世帯が中心である。 サイトのオープンは2017、2018 年設置共に、概ね8 月からである。リアルタイムアドバイスが2017年の夏期は発信時期が遅れ、冬季に関してはシステムの不具合により12月のみの発信となった。週間環境レポートは2018年より作成を開始し、配布を行った。 (2) 夏期実験結果 サイト閲覧頻度では、2018年設置住戸は週に1回以上見る割合が75%程度で維持され、2017年設置住戸はこれより少ない傾向であったが、LEDインジケータはほとんどの住戸が1日に数回以上確認しており、サイト以−160−発表番号 78〔中間発表〕

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