2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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上に活用されている。リアルタイムアドバイスは表示回数の8 割以上で従っていることが確認され、熱中症注意報を見てエアコンを稼働する行為も多数確認された。週間環境レポートでは、配布前後での外気条件が類似する期間で電力消費量及び体感温度の快適率を比較したところ、A~K は約半数で,N~U はほぼ全ての住戸で電力消費量が減少していた。また、各グループを配布前の平均電力消費量で多消費群と少消費群として比較したところ、両グループともに多消費群の方が省エネ性が向上していることが確認された(図3)。配布前後の体感温度では、配布前の値が高い住戸ほど配布後の平均温度は減少しており、平均値27℃以下の快適群と27℃超の高温群の快適率を比較すると高温群の快適率が増加し、暑さを我慢せずに改善している様子が明らかとなった。省エネ行動・環境調整行動へのレポートの参考度は、どちらも約7割が参考になったとの回答であり、中でも電力情報の参考度は95%と最も高い結果であった。 (3) 冬期実験結果 2019年度冬期に実装したヒートショック注意報機能の活用状況を室内温度差の大きい住戸の1つであるT邸で確認したところ、図4のようにヒートショック注意報が表示されたら浴室の暖房をつけ、ドアを開けることで洗面脱衣室を暖め対応していることが確認された。 2.3履歴情報見える化システムの構築 住宅履歴情報システムの現状調査の結果、履歴情報が居住者にほとんど利用されていないこと、事業者側も活用ニーズを模索している状況が確認されたことから、環境情報見える化システムを活用した履歴情報見える化システムを開発した。図5にその画面例を示す。 試作した住宅履歴情報見える化システムを被験者住戸に実際に閲覧してもらい、その有用性の確認と課題点やニーズの抽出を行った。試作したシステムを有用だと思うと回答した住宅は9割以上となり、システムの有用性を確認できた。今まで住宅履歴情報を蓄積するという考えがなかったが、見える化によって住宅の維持管理に対する関心が高まるという意見が多く見られた。また情報内容もほとんどの項目で有用性を確認することができた(図6)。中でも特に重要だと思う情報項目では、補修・改修履歴を挙げる住宅が9割以上であった。 3. まとめと今後の展開 環境情報見える化システムとして、ビューアサイト、LEDインジケータ、リアルタイムアドバイス、週間環境レポートのそれぞれ役割を分担して環境調整行動・省エ 図3レポート配布前後の電力消費量変化率平均 図4ヒートショック注意報に対する行動例 図5住宅履歴情報ページの画面例 図6各情報項目の有用性 またこれに組み込んで開発した履歴情報見える化システムの試験運用結果では、将来の断熱改修へ向けた準備や計画ができ、維持管理に対する関心が高まるという高い有用性が確認できた。今後は汎用性の高いシステムとして、普及に向けた開発を進めていく計画である。 4. 参考文献 1) ASHRAE : Thermal environmental conditions for human occupancy, ANSI/ASHRAE Standard 55-2013, 2013他 5. 連絡先 yusuke@cc.kogakuin.ac.jpネ行動の促進効果を高める結果となったと考えられる。 −161−

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