2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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外外壁壁面面のの箇箇所所ごごととにに異異ななるる経経年年変変化化ををももたたららすす雨雨水水移移動動現現象象のの解解明明 ~~築築4400 年年超超のの鉄鉄筋筋ココンンククリリーートト造造建建築築物物モモニニタタリリンンググにに基基づづいいてて~~ 宇都宮大学 地域デザイン科学部 建築都市デザイン学科 准教授 藤本 郷史 1. 研究の目的と背景 建築物の劣化現象の多くは,雨水の移動現象に影響を受ける。しかし,どのような建築物の条件(降水,風.温湿度等の環境,部材形状・材料物性等)で水分供給・含水率上昇が発生するかは十分に解明されていない。これは,実建築物での長期間モニタリングが困難であり,データが不足していることに起因する。そこで,本申請研究では,築40年以上経過した実際の鉄筋コンクリート構造物2棟を対象に,各種のモニタリング計測および対応する屋内試験を行い,建築物と環境の境界面における雨水移動現象を解明することを目的として,研究を進めてきた。本稿では,貴財団助成研究の中間報告として,これまでの実施状況を報告する。 2. 研究の実施内容 2.1 画像モニタリングによる水膜モニタリング 対象建築物の画像観察を行うモニタリング装置を設計・製作して設置し,雨天時壁面の観察を行った。HDD 故障でデータが喪失してしまい,主要な部分の分析が不可能となってしまったが,2019 年度末から現在までの再計測による早急な成果の復旧を試みている。 図1 対象建築物の外観(左),外壁の断面例(右) 図 2 気象観測装置(左),画像モニタリング装置(右) 予備実験および再計測の分析から,付着した水滴が水膜の流下現象へ移行することを発見しており,壁面雨量,風向・風速,壁面の吸水係数,乾燥日数などが影響因子であることを定性的に明らかにしつつある。 2.2 温湿度センサ埋設による部材内含水率推定 コンクリートのような多孔質材料内に微小空間を設けると長期には含水率と微小空間の相対湿度には相関がある。一方,既往文献から,コンクリート内部の鉄筋は,微小空間に存在する湿度に依存して腐食速度が異なると考えられる。そこで,部材を屋内側から穿孔し,表1に示す異なる水準で温湿度センサを埋設し,部材内の湿度モニタリングを行った。 表 1 部材内温湿度計測の因子と水準 因子 水準 目的 深さd(mm) 10,30,50 屋外側からの深さの影響 階高r(階) 1,3,5 地面からの高さの影響を検討 方角 北面,南面 風による方角の影響を検討 図 3 降雨前後の相対湿度の平均値の差(左) 降水時の湿度変化の例(右) 図 4 ひび割れ近傍における高湿度の傾向(左) 計測部近傍にあるひび割れ補修痕(右) −162−発表番号 79 〔中間発表〕

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