2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図 5 南壁面の日射による乾燥の影響 申請計画では,2020年度以降に計測の拡充を予定しているが,これまでに,①相対湿度の降雨による上昇は吸水速度よりかなり緩やかであること,②ひび割れ近傍には雨水の滞留に起因すると思われる顕著な高湿度部(高含水率部)があること,③日射による乾燥が方角によって顕著に異なること,④部材の高さによって含水率が顕著に異なること,などを見出した。 2.3 実建築物の含水率推定に向けた屋内試験 本研究で着目する雨水の供給を実建築物で継続的にモニタリングするため,電気化学的アプローチによる含水率推定手法の改良を計画していた。部材内の表面と内部で含水率が異なるというモニタリング結果を踏まえ,電極表面に含水率分布がある場合の電気化学分析を行った。その結果,含水率分布のある電極の電気化学モデルの構築に成功しつつあるほか,工学的には電極の一部を絶縁することで,部材表面・内部の乾燥・吸水を適切にモニタリングし,少なくとも劣化リスク等の異常検知に応用できる知見を得た。 図 6 屋内実験の概要(左),モデル化の概要(右) 図 7 体積含水率と回路素子R2推定値の対応(左) 絶縁部がないもしくは適切でない場合の結果例(右) 2.4 実建築物の吸水特性分析に向けた屋内試験 本研究で着目する雨水は吸水によって部材内の含水率上昇に寄与する。そこで申請計画に沿って,申請者らが検討してきた2液吸水試験を実建築物に適用するための屋内実験も行った。具体的には,屋外条件で想定される様々な湿度環境を再現して長期に保管したモルタルを対象に,内部接触角をLucas Washburn式から推定した。その結果,湿度変化に応じて材料仏跡が異なることを見出し,屋外環境の気象条件に対応した材料の吸水性の変化メカニズムを解明しつつある。 3. まとめ 2019年度は,おおむね計画通りに研究を実施した。ただし,データ喪失の影響で成果発表に遅延が生じているほか,コロナウイルスの影響で2020年度の実験が開始できておらず,降雨が期待できる6月の計測が切望的であることから遅延を懸念している。うまくマネジメントして乗り切りたいと考えている。 4. 今後の展開 2020 年度は,データ喪失の影響を取り戻すため,申請計画より画像モニタリングの長期に継続したいとの計画である。それ以外の研究項目については申請計画通りに実施したいと考えている。すなわち,水滴・水膜モニタリングの対象部材の拡張,電気化学計測を中心とした含水率・分布推定の実現と実建築物適用,吸水試験の実建築物適用である。しかし,いずれの実験・計測も後述のように,5 月時点でコロナウイルスの影響で開始できておらず,遅れを心配している。 5. 参考文献(関連発表) 1) S. Fujimoto, et.al., Proc of Conmat. 2020 (accepted) 6. 連絡先 住所 :栃木県宇都宮市陽東7-1-2 電話 :028-689-6207 メール:fujim@cc.utsunomiya-u.ac.jp 試験体X制御用PCインピーダンスアナライザ4端子プローブステンレス製電極電極間隔50mmコンクリート試験体X(200×200×100mm)R₁R₂CPE(P,n)実部Re(Z)[Ω]虚部‒Im(Z)[Ω]半円周波数電極の界⾯効果R₁R₁+R₂0100020003000400000.20.40.6R₂の変化量(Ω)体積含水率の変化量(g/cm³)B①B②B③01000200030004000500012357142128R₂(Ω)材齢d[日]□C〇D気中養生W/C=45%00.030.060.090.120.1504080120質量増加量(g/cm^2)時間(√sec)00.030.060.090.120.1504080120質量増加量(g/cm^2)時間(√sec)W/C=45%RH=98%14⽇間静置θ=71W/C=45% RH=98% 7⽇間静置 θ=43 −163−

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