2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図1 行政区集約状況の一例(町内移住3) 図2 シナリオ別の家庭内・交通CO2排出量 図3 シナリオ別の行政費用 となった.最高値は町内移住3シナリオの全体で10,866[t-CO2],1人あたりでは0.27[t-CO2]減少する結果となった. 5. 行政費用の推計 行政費用に関しては,上下水道,道路,公民館,教育施設(保育園、小学校、中学校)の整備・維持管理費を主として日高川役場から提供を受けた種々のデータに基づき推計した.図3に前述のシナリオ別の行政費用に関する経年変化を示す.整備・維持管理費合計について,1人あたりでみると2015年時点では約13.5[万円/人]であるのに対し,「BAUシナリオ」は約32.2[万円/人]と2.4倍となることが分かった.集約強度が上昇するに従って1人あたりは減少し,「町内移住3シナリオ」においては約16.0[万円/人]と「BAUシナリオ」の約半分に抑えられることが分かった.BAUからの減少率に関して,2030年時点ではほぼ横ばいの結果となったが,2050年時点では線形的な変化となり,集約強度上昇とともに経済性の効率が上昇することが予想される. 6. まとめ 本研究では,4つの将来シナリオ(BAU・町内移住1~3)に対してエネルギー消費量(CO2排出量)と行政費用の変化を検討した.集約を行うことで,人口密度や家庭内および日常移動のエネルギー消費に伴うCO2排出量に加えて,行政費用の削減効果が認められた.また,効果は集約強度順に表れた. 今後の課題として,農山村地域の持続可能な居住区モデルとエネルギーシステムを提案する上で,さらなる都市サービス機能の変化を予測するとともに,間接的なCO2排出量や再生可能エネルギー利用を考慮した環境面(CO2排出量),経済面(都市資本形成や維持管理に掛かる費用),快適性(住民QOL)の各側面から縮退・集約化による影響を評価することが挙げられる. 7. 参考文献 1) 小暮ほか:農山村地域における生活実態の把握とエネルギー消費予測モデル世帯の設計,日本建築学会環境系論文集,No.718,2015. 2) 鳴海:木質資源動態予測モデルの構築ならびに資源活用可能性に関する評価,日本建築学会環境系論文集,No.737,2017. 3) 堀ほか:居住環境評価を基にした農山村地域における地域再設計シナリオの作成,日本建築学会技術報告集,No.55,2017. 4) 檜山ほか:農山村地域における日常移動環境の実態把握に関する研究-和歌山県日高川町におけるケーススタディ-,土木学会論文集G(環境),Vol.74,2018. 5) 下田ほか:家庭用エネルギーエンドユースモデルを用いた我が国民生家庭部門の温室効果ガス削減ポテンシャル予測,Journal of Japan Society of Energy and Resources,Vol.30 No.3,2009 8. 連絡先 240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-7 横浜国立大学総合研究棟 S510 Tel 045-339-3719 E-mail narumi-daisuke-rs@ynu.ac.jp −165−

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