2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
176/206

一一般般廃廃棄棄物物処処理理・・リリササイイククルルのの広広域域化化にに関関すするるGGIISSをを用用いいたた統統合合的的評評価価手手法法のの開開発発 宮崎大学地域資源創成学部准教授 戸敷浩介 1. 研究の目的と背景 近年の日本の一般廃棄物処理は,次の3つの事象の影響を強く受けている。第一に,一般廃棄物処理を担う市町村等の基礎自治体の財政悪化である。そして第二に,ごみの量の減少である。住民の高齢化や人口減少が顕著な地方では,特にその傾向がみられる。また,容器包装プラスチックの分別をはじめ様々な分別・リサイクル政策が導入されている。その結果,可燃ごみの量は大きく減少している。第三に,清掃工場の大型化である。その端緒となったのは1980年代から1990年代にかけて社会問題化したダイオキシン類対策である。廃棄物燃焼時に不完全燃焼を起こさないよう1,000℃程度の高温で滞留時間も一定に保ち,低温状態の時間帯をなるべく減らすために24時間稼働できる全連続運転式の炉が求められ,大型の焼却炉が建造されるようになった。 基礎自治体の一般廃棄物政策の効率化が求められる中で,可燃ごみについては清掃工場の大型化とごみ量の減少が進み,稼働率の低下につながっている。 1997年に当時の厚生省から各都道府県に出された「ごみ処理の広域化計画について」という通達は,大型化された清掃工場を周辺の基礎自治体で共同使用することで,清掃工場の効率的な運営と一般廃棄物政策にかかる処理コストの削減を狙いとした。しかし,現在でも広域処理の導入が進んでいない都道府県は多い。その理由としては,まず一般廃棄物の自区内処理原則が法的に定められ,歴史的にも定着しているため,広域処理の議論へのつながりにくいことが挙げられる。そして次に,広域処理の影響がどのように出るのか,想定が難しいことである。一般廃棄物の広域処理を行った場合による工場統合によるコスト削減量,エネルギー回収量の増加といったメリットと,それによるごみ収集車の走行距離の延長による環境負荷や燃料消費量の増加といったデメリットが分からない。従って,そのようなメリットとデメリットをいかに複数の基礎自治体で享受・負担することになるのか,定量的な議論が出来ない。 そこで本研究では,生活系一般廃棄物の広域処理を行った場合の環境,エネルギー収支への影響について,地理情報システム(GIS)や被害算定型環境影響評価手法等(LIME2)を用いて,定量的且つ統合的に評価する手法の構築を目的とした。まず,GISと人口分布データを用いて生活系一般廃棄物の排出量や清掃工場の情報(位置や処理能力など),交通網などを盛り込んだGISデータベースを作成する。その上で,広域処理やごみの分別などの一般廃棄物の政策シナリオを想定し,GISを用いて広域ブロックの形成や走行ルートや距離の変化による環境影響などを解析した。得られた指標の内,エネルギー収支や資源回収量の増減については市場価格等により経済指標に変換する。環境影響については,LIME2を用いて外部費用として経済指標に変換する。いずれの指標も経済指標に変換することで,シナリオ間の影響を単一指標で比較検討するようにした。複数のシナリオを経済指標で比較検討することで,環境影響,エネルギー収支と経済性の面で最も効率が良い政策シナリオを明らかにする。本稿では,宮崎県全体の可燃ごみの広域処理を具体例として,現状およびいくつかの広域化シナリオを想定し,構築した評価手法を用いて各シナリオにおける指標を計算し,最も効率が良い広域処理ブロックについて検討した結果を報告する。 2. 研究内容 本研究では,ESRI社が提供するArc GISを用いて,GISデータベースを作成した。GISデータベースに搭載した情報は,宮崎県の地域メッシュの人口統計データや宮崎県道路網データ,清掃工場・中継施設のポイントデータなどである。更に,環境省の一般廃棄物処理実態調査結果,各市町村の一般廃棄物処理計画等を用いて,市町村別に一人一日当たり可燃ごみ排出量を算出した。可燃ごみの収集を週2回と設定して,1kmメッシュ毎の収集日あたり可燃ごみ排出量を算出した。 次に,宮崎県の現在の収集区域を踏まえて可燃ごみ収集・処理シナリオを設定した。基本的な考え方として,現状の清掃工場以外に新規施設を造らないこと,使用開始年が古いか,または処理能力が小さい(廃棄物発電設備がない)清掃工場を段階的に廃止して広域ブロックを−170−発表番号 82〔中間発表〕

元のページ  ../index.html#176

このブックを見る