2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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形成するように設定した。また,廃止した工場の中継施設としての使用の有無もシナリオに加えた。表1に概要を示したように,宮崎県における可燃ごみ収集・処理区域の広域化シナリオを7つ設定し,それぞれGISデータベースを用いて各清掃工場・中継施設の収集範囲と,ごみ収集車・輸送車の走行経路および走行距離を解析した。 表1シナリオの概要 なお,実際のごみ収集車は四方のメッシュ内でも走行しながら可燃ごみを収集しているが,異なる収集区域のシナリオでも四方のメッシュ内でのごみ収集車の走行距離や燃料消費は変わらないとして,本研究ではその分の走行距離や燃料消費量等は計算していない。つまり,本研究における各シナリオの走行距離や燃料消費量に,各メッシュ内のごみ収集車の走行分は含まれていない。従って,本研究で計算する各シナリオの指標は,そのシナリオにおける絶対量ではなく,各シナリオ間の差だけが意味を持つ。例えば,の現状シナリオと他のシナリオでどれだけの差が出るのかについて着目することになる。各シナリオにおいて算出された年間の環境影響,燃料消費の経費,廃棄物発電による発電電力量の経済指標への換算値を用いて,現状シナリオとその他のシナリオとの差を表にまとめた。今回のシナリオ間比較をみると,最もメリット(収支)が大きいシナリオは,シナリオである。シナリオは,宮崎県内の清掃工場を,大型で廃棄物発電設備があるつ工場に集中し,且つ廃止した日南工場のみ中継施設として再利用するシナリオである。シナリオ(日南工場に加えて日向工場も中継施設として再利用する)もほぼ同じ値を示しているが,シナリオ(廃止した工場は中継施設として使用しない)やシナリオ(日向工場のみ中継施設として再利用する)は,現状よりメリットは大きいがやに比べて約万円分メリットが少ない。このように,もし工場に集中して広域ブロックを形成するのであれば,少なくとも日南工場は中継施設として再利用すべきことが分かる。表2Aシナリオと各シナリオの差 3. 今後の展開(計画等があれば) 本報告では,宮崎県内の可燃ごみの収集区域の広域化を事例として複数のシナリオを設定し,現状との差を評価した。この評価手法は,宮崎県に限らず他の地域についても,データがあれば評価が可能である。本研究では静岡県と宮崎県を中心にデータベースを作成したが,特に過疎化が進む地方を中心に,ごみの排出量が減少する将来に向けて,広域処理の方向性を検討したい。また,可燃ごみだけでなく,資源の収集範囲の最適化にも応用したいと考えている。 4. 参考文献 川村清美・井村秀文「地域ソ―シャル・キャピタルを考慮した一般廃棄物処理事業の効率性評価―県庁所在都市の比較分析―」環境システム研究論文集村上進亮・藤井実・南齋規介・橋本征二・大迫政浩・森口祐一「地理特性を考慮した収集・運搬費用算定モデル」廃棄物学会論文誌5. 連絡先 宮崎県宮崎市学園木花台西1-1 toshiki.k@cc.miyazaki-u.ac.jp −171−

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