2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図2.多項ロジステック回帰モデルによる残存木損傷程度確率の予測 <<集集材材作作業業にに従従事事ししてていいるるアアジジアアゾゾウウのの生生活活様様式式とと行行動動分分析析>> ミャンマーで集材利用されているアジアゾウの生活様式については,ミャンマー語で記載された政府刊行物の整理と現地でのゾウ使いへの聞き取り調査によって取りまとめた.行動分析については,2019年12月23日~27日の5日間,3頭のゾウの首にGPSを装着し,約30秒間隔で位置を記録した. 集材作業は6月16日開催に開始され2月15日には終了することが厳格に定められている.週単位の活動スケジュールについては,3日間勤務で翌日1日が休養日となる.日毎のスケジュールとしては,集材作業は早朝から数時間のみ実施され,その後は夕方まではエレファントキャンプでの休息となる.そして,夕方以降はフリーに放たれ,早朝にゾウ使いによってエレファントキャンプに戻されて,再び集材作業が開始される. 図3は3頭のゾウに装着したGPSで記録された5日間の行動軌跡である.赤色の軌跡が早朝から午前10時ぐらいまでの集材作業時の軌跡で,青色が集材作業時間以外のフリーの時間帯である.フリーの時間帯におけるエレファントキャンプサイトからの平均距離は0.172 km から 0.364 kmであり3頭間では有意な差がみられたが,フリーの状態になってもキャンプサイトに比較的近い位置で移動していることがわかった. ベースキャンプは林班内の沢沿いに設置されるため,水場に近く,さらにはベースキャンプ周辺を含め伐採地内にはゾウの主食となる竹の資源が豊富にあるため,採餌活動が容易であることもアジアゾウとの共生が可能となっている理由と考えられた. 図3 3頭のアジアゾウの5日間のフリー時間と集材作業従事時間におけるGPS軌跡 3. 今後の展開 本研究では,まず,他国で一般的な重機集材と比較して評価し、ゾウ集材では極めてインパクトが小さいことがわかった.ゾウは残存木を避けながら丸太を運搬するため,熱帯林業で問題視されている重機集材時の残存木への大きな損傷はほとんどないことが分かった.ゾウが集材作業に従事するのは早朝の数時間であり,集材が終わると休息時間となりリリースされるが、ベースキャンプから数百mの距離にいることがわかった・林業生態系におけるアジアゾウとの共生には,水辺環境と採餌環境が重要であり,これらの長期的な保全が求められる. 4. 参考文献 T.C. Khai, N. Mizoue, T. Kajisa, T.Ota and S. Yoshida, 2016a. Global Ecology and Conservation, 7: 132-140. T.C. Khai, N. Mizoue, T. Kajisa, T.Ota and S. Yoshida, 2016b. International Forestry Review, 18(3): 296-305. S.M., Mon, N. Mizoue, N.Z.Htun, T. Kajisa and S. Yoshida, 2012. Forest Ecology and Management, 267: 190-198. 5. 連絡先 mizoue.nobuya.277@m.kyushu-u.ac.jp −187−

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