2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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の爬虫両生類がシロアリを捕食していたことは、彼らが熱帯雨林の物質循環に大きな役割を果たしている可能性を強く示唆する。同時に、その物質循環に果たす生態系の全体像を把握するためには、更に継続した調査を行うことが必須である。 図1新種コガタラルティアトカゲ 3. 今後の展開 今回、ラルティアトカゲの新種が見つかった地域は国立公園でも保護区でもない。おそらく未調査なだけで地域固有の近縁種がさらに存在する可能性を示唆している。そして今回発見された他の多くの地中性または半地中性の種も調査地域で初報告のものが多い。彼らは地中において地上の物質生産や循環の基盤であるシロアリを捕食して、その個体数の動態に寄与していることが示唆された。 今後は熱帯林の地中に隠された多様性を更に明らかにすることで、熱帯林保全の必要性に具体的根拠を付与することを目指す。シロアリ専食小型脊椎動物の基礎的な生態が解明されれば、本調査地のみならずアジアにおけるさらなる種多様性の解明に大きく貢献することになる。また、シロアリバイオマスから始まる食物連鎖網や分解過程への影響・動態についての研究は、陸上脊椎動物研究に残された数少ないフロンティアである。学術的に価値が高い取り組みとなることが期待される。 4. 参考文献 Fukuyama, I., T. Hikida, M. Y. Hossman, and K. Nishikawa. 2019. A new species of the genus Larutia (Squamata: Scincidae) from Gunung Penrissen, Sarawak, Borneo. Zootaxa: 4661(3):522-532. 5. 連絡先 西川 完途(にしかわかんと) 京都大学大学院 地球環境学堂 606-8501京都市左京区吉田本町 Tel: 075-753-6848 / Fax: -2891 E-mail: nishikawa.kanto.8v@kyoto-u.ac.jp −191−

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