2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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rotula)には寄生しなかった。Pirsonia sp.2018はT. rotulaと R. setigeraに寄生するが他7種には寄生しなかった。 図2.珪藻Cerataulina pelagica(左)およびThalassiosira rotula(右)に寄生するPirsonia sp.(Yamasaki 2020) C)長期保存試料の観察、計数 東京海洋大学が2016年4月から2019年6月まで3地点(F3, YD, CB)で毎月取り続けていた試料について(合計120試料)について、植物プランクトンを計数した。寄生菌類についても計数を試みたが、確認できなかった。計数結果では、いずれの季節・地点においても珪藻よりも渦鞭毛藻類が多かった。 3. 今後の展開 A)調査 引き続き、東京海洋大学の実習船「ひよどり」を用いて、調査観測をおこなう。試料がある程度蓄積した時点で、DNAを抽出し、次世代シーケンサーをもちいた網羅的解析(DNAメタバーコーディング)を行う。 B)顕微鏡観察・単離培養・培養実験 引き続き、珪藻に寄生する生物の単離を試みる。ただし、寄生菌は発見が難しいと考えられるため、対象を真核生物全般の寄生生物に広げ単離を試みる。 単離できた寄生生物Pirsonia sp.をもちいて異なる温度条件で培養実験を行い、寄生できる珪藻の範囲(宿主特異性)と温度との関係を調べる。 珪藻を利用する消費者を特定し、相対的な消費速度を比較するために、希釈法による捕食実験(Dilution exp.)を行う。東京湾の海水を濾過海水(<0.2µm)で段階的に希釈し、希釈率に応じた小型の消費者の存在量と珪藻の消費速度を解析し、珪藻への影響力と、消費する生物の相対的重要性を評価する。 C)長期保存試料の観察、計数 東京海洋大学の保有試料について(合計120試料)について、別の保存液(グルタルアルデヒド)で固定した試料をもちいて、珪藻と珪藻に寄生する生物の検出、計数を試みる。寄生生物の計数は、菌類を特異的に染色する試薬 (Calcofluor WhiteおよびFITC-WGA)を用いて蛍光顕微鏡下で行う。2019年度に計数した他の植物プランクトンの結果と統合し、環境要因(各種栄養塩濃度、水温、塩分濃度)と植物プランクトンの群集構造の関係を調べるとともに、寄生生物が確認できた場合にはその出現パターンを解析する。 D)千葉県の観測データの整理・解析 千葉県が水質調査として定期的に調べている東京湾の植物プランクトンの計数結果(https://www.pref.chiba.lg.jp/suiho/kasentou/koukyouyousui/h30.html)を整理し、植物プランクトンの優占種や地点による分布の違い、経年変化を明らかにする。 4. 参考文献 Hans-Peter Grossart, Silke Van den Wyngaert, Maiko Kagami, Christian Wurzbacher, Michael Cunliffe, Keilor Rojas-Jimenez (2019) Fungi in aquatic ecosystems. Nature Reviews Microbiology 17, 339–354 Seiji Ishida, Daiki Nozaki, Hans-Peter Grossart, Maiko Kagami (2015) Novel basal fungal lineages from freshwater phytoplankton and lake samples. Environmental Microbiology Reports 7(3), 435-441. Christian Wurzbacher, Ellen Larsson, Johan Bengtsson-Palme, Silke Van den Wyngaert, Sten Svantesson, Erik Kristiansson, Maiko Kagami, Henrik Nilsson (2019) Introducing ribosomal tandem repeat barcoding for fungi. Molecular Ecology Resources 19: 118-127. Daisuke Yamasaki (2020) Pirsonia sp., parasitic flagellate on the diatom Cerataulina pelagica: Isolation and their spatiotemporal changes in the infection rate in Tokyo Bay. 東京海洋大学大学院修士論文 5. 連絡先 横浜国立大学大学院環境情報研究院水域生態学研究室 鏡味麻衣子 〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-7 TEL:045-339-4379、E-mail: kagami-maiko-bd@ynu.ac.jp https://makagami.wixsite.com/mycoloop −193−

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