2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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環環境境調調和和型型ヘヘテテロロ環環骨骨格格のの合合成成とと機機能能性性ヘヘテテロロ環環化化合合物物へへのの展展開開 山形大学大学院理工学研究科 助教 皆川 真規 1. 研究の目的と背景 ヘテロ環骨格は,医薬品や機能性材料に必要不可欠な構成成分であり,その効率的な構築方法の開発は重要である[1], [2].しかしながら, 従来のヘテロ環骨格合成は[3] [4], 1) 多段階を要する. 2) 有毒性のハロゲン試薬を使用する. 3) 環化反応の前駆体となるアルケン, またはアルキン試薬の調製が必要である. ことが大量の廃棄物(過剰のハロゲン試薬や無機塩および溶媒など)を生じるため,21世紀の持続可能な社会実現を目指す環境調和型合成の観点から問題となる.本研究では,入手用意な芳香族化合物とジオール類を原料とし,副生成物が水のみの金属触媒反応によるヘテロ環骨格の一段階直接合成を目的とした[5], [6], [7].具体的には, はじめに芳香族アミン(アニリン)とジオール類との触媒的環化反応を検討し,理論上副生成物が水のみの含窒素環化合物の効率的な触媒的合成を目指した. また,芳香族チオールとジオール類との直接的触媒環化反応についても検討し,含硫黄環化合物の効率的な直接的合成も目標とした. 2. 研究内容 (実験, 結果と考察) 芳⾹族アミンとジオール類を⽤いた含窒素環合触媒的直接環化反応の検討. 今回の研究において,N-メチルアニリン(1a)と1,3-プロパンジオール(2a)との反応をモデル反応系として選び,触媒反応条件の検討を行った(図 1). その結果,触媒としてイリジウムクロライド(5.0 mol%), 配位子としてBINAP(7.5 mol%)存在下, メシチレン溶媒中165 °Cで加熱攪拌することにより,目的とした含窒素環化合物1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(3a)を73%の収率で得ることに成功した. また,この環化反応条件は,様々なN-メチルアニリン類1b–eと2aとの環化反応に適応することが可能であり,対応するテトラヒドロキノリン誘導体3b–eを77–83%収率で得ることができた. 同様の反応条件下, N-メチルアニリン(1a)とエチレングリコール(2b)の反応でも触媒的環化反応は進行し,1-メチルインドール(4)を45%の収率で得た(図 2). 図 1. N-メチルアニリンと1,3-プロパンジオールの直接的環化反応 図 2. N-メチルアニリンとエチレングリコールの直接的環化反応 含窒素環の触媒的合成法を利用した機能性化合物への展開 上述の触媒反応条件を用い,有機EL材料の基礎骨格(テトラヒドロベンゾキノリジン誘導体)の合成を試みた. 具体的には,イリジウム触媒とBINAP配位子存在下, メシチレン溶媒中165 °Cの反応条件において,アニリン類5a–gと1,3-プロパンジオール(2a)の直接的環化反応を検討した(図3).その結果,テトラヒドロベンゾキノリジン誘導体6a–g を26–76%の収率で得ることができた. したがって,イリジウム触媒によるテトラヒドロベンゾキノリジン誘導体の新規合成法の開発に成功した[10].特に,2,3,6,7-Tetrahydro-8-fluoro-1H,5H-benzo[ij]quinolizine (6e) と2,3,6,7-Tetrahydro-9-trifluoromethyl-1H,5H- benzo[ij]-quinolizine (6g)は今までに報告例のない新規化合物であり,含窒素環化合物の新規合成法開発に成功すると共に,その手法を利用した新規含窒素環化合物の合成にも成功した. 次に,この反応経路に関する知⾒を得るために中間体と想定される3-(フェニルアミノ)プロパン-1-オール(1’) HN1a+HOOH2bIrCl3: 5.0 mol%BINAP: 7.5 mol%mesitylene165 °C18 hN445%HNR1+HOOH12aIrCl3: 5.0 mol%BINAP: 7.5 mol%mesitylene165 °C18 hR1N31a: R1= H1b: R1= OMe1c: R1= Me1d: R1= F1e: R1= Cl3a: R1= H 73%3b: R1= OMe 77%3c: R1= Me 80%3d: R1= F 3e: R1= Cl83%82%−24−発表番号 12〔中間発表〕

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