2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図3. アニリン類と1,3-プロパンジオールの直接的環化反応 を出発原料として我々の触媒的環化反応条件を検討することにした(図4). イリジウム触媒(5.0 mol%)とBINAP配位⼦(7.5 mol%)存在下, 3-(フェニルアミノ)プロパン-1-オール(1’)をメシチレン溶媒中165 °Cで18時間加熱攪拌したところ,1,3-プロパンジオールなしでもテトラヒドロベンゾキノリジン6aが26%収率で得られることがわかった(式1). またこの反応中に,アニリン(4a)の⽣成も19%の収率で確認できた. さらに同様の環化反応条件下,3-(フェニルアミノ)プロパン-1-オール(1’)と4-メチルアニリン(5b)の反応では,2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン (6a)が9%収率で生成すると同時に2,3,6,7-テトラヒドロ-9-メチル-1H,5H-ベンゾ[ij] キノリジン (6b)が26%収率で生成していることを確認した(式2). また,3-(フェニルアミノ)プロパン-1-オール(1’)とN-メチルアニリン(1a)の反応では,2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン (6a: 12%)と1,2,3,4-テトラヒドロ-1-メチルキノリン (3a: 52%)が生成すると共にアニリン(5a)が21%の収率で生成していることが確認できた(式3). 芳⾹族チオールとジオール類を⽤いた含硫⻩環化合物の触媒的直接環化反応の検討 触媒反応による芳⾹族チオールとジオール類を⽤いた直接的環化反応の検討も⾏った. 具体的には,2-ナフタレンチオールと1,3-プロパンジオールを原料とし,環化反応が進⾏する触媒反応条件の検討を⾏った. その結果, スカンジウムトリフラート(5.0 mol%)触媒存在下, 165 °Cの反応条件でこの環化反応は進⾏し,⽬的とした含硫⻩環化合物, ナフトチオピランを68%の収率で得ることに成功した. 以上の結果より,未だ初期的な知⾒段階であるが,⼊⼿容易な芳⾹族化合物とジオール類を原料とした触媒反応による直接的環化反応条件を⾒出し,ヘテロ環化合物合成に成功した.このヘテロ環化合物の新規触媒的合成法の開発により,今までに報告例のない新規ヘテロ環化合物の合成も可能であった. 3. 今後の展開 今回の芳⾹族チオール類とジオール類の触媒的直接環化反応において,⽬的環化物が低収率に留まった反応系では,芳⾹族チオールがエネルギー的に安定な芳⾹族ジスルフィド化合物を⽣成していることが観測できた.そこで,この芳⾹族ジスルフィドを出発物質とするジオール類との触媒反応系を検討することで,より効率的で有⽤な含硫⻩環化合物の合成が提案できるのではないかと考える. また,詳細な反応機構の解明および含酸素環化合物や,2種類以上のヘテロ原⼦を含む新規ヘテロ環化合物合成法も検討していきたい. 4. 参考文献 [1] Corma, A.; Navas, J.; Sabater, M. J. Chem. Rev. 2018, 118, 1410. [2] Wang, D.; Astruc, D. Chem. Rev. 2015, 115, 6621. [3] Reddy, C. R.; Mallesh, K. Org. Lett. 2018, 20, 150. [4] Cheng, X.; Cao, X.; Xuan, J.; Xiao, W.-J. Org. Lett. 2018, 20, 52. [5] Tsuji, Y.; Huh, K.-T.; Watanabe, Y. Tetrahedron Lett. 1986, 27, 377. [6] Tsuji, Y.; Huh, K.-T.; Watanabe, Y. J. Org. Chem. 1987, 52, 1673. [7] Amamoto, H.; Obora, Y.; Ishii, Y. J. Org. Chem. 2009, 74, 628. [8] Minakawa, M; Okubo, M; Kawatsura, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2015, 88, 1680. [9] Minakawa, M; Okubo, M; Kawatsura, M. Tetrahedron Lett. 2016, 57, 4187. [10] Minakawa, M; Watanabe, K; Toyoda, S; Uozumi, Y. Synlett 2018, 29, 2385. 5. 連絡先 住所: 992-8510 山形県米沢市城南4-3-16 Tel: 0238-26-3470 反応の推定経路については,発表にて詳細を報告する. E-mail: minakawa@yz.yamagata-u.ac.jp HNOHIrCl3: 5.0 mol%BINAP: 7.5 mol%mesitylene 165 °C18 hN26%1'6a+4a19%NH2NH2MeIrCl3: 5.0 mol%BINAP: 7.5 mol%mesitylene 165 °C18 hN+NMe9%26%HNIrCl3: 5.0 mol%BINAP: 7.5 mol%mesitylene 165 °C18 hN+N12%52%+NH221%1'5b6a6b1'1a6a3a5a++(1)(2)(3)NH2+HOOH5a–g2aIrCl3: 5.0 mol%BINAP: 7.5 mol%mesitylene165 °C18 hN6a–gR2R2N6a73%N6b67%MeON6c76%MeN6d75%FN6e59%FN6f75%ClN6g26%F3C−25−

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