2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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イイミミダダゾゾリリウウムム塩塩をを有有すするる共共役役ポポリリママーーのの多多成成分分連連結結反反応応にによよるるラライイブブララリリーー合合成成とと超超高高感感度度アアニニオオンンセセンンササーーのの戦戦略略的的創創出出 群馬大学 大学院理工学府 分子科学部門 助教(卓越研究員) 覚知 亮平 1. 研究の目的と背景 三種類以上の出発物質から一段階の反応によって、単一の生成物を与える反応は多成分連結反応と呼ばれている。多成分連結反応の多くは複雑な触媒を必要とせず、さらに反応基質の構造をその生成物へと取り込むことが可能なため、グリーンケミストリーの観点からも注目が集まっている。さらに、多成分連結反応は一段階反応で多様な生成物を与えることができるため、多様性指向型合成の達成には必須な反応群である。実際に、多成分連結反応は、有機合成化学や創薬科学において、その合成的な有用性が示されてきた。一方、高分子合成に多成分連結反応が取り入れられたのはごく最近のことである。1-3従って、限られた反応のみが高分子合成に活用されているため、高分子合成にも充分適用可能な多成分連結反応の更なる提案は重要な研究課題となっている。様々な多成分連結反応が知られているが、発表者はvan Leusen三成分連結反応(vL-3CR)に着目した。 (Scheme 1)。 Scheme 1. vL-3CRの反応様式 vL-3CRは、アルデヒド、アミン、α-スルホニルイソシアニドの間の反応であり、生成物としてイミダゾールを与える。4, 5注目すべきは、置換イミダゾール骨格を一段階で与えうる点にある。置換イミダゾール骨格はアルキル化反応を容易に受け、対応するイミダゾリウム塩を与える。ここで、イミダゾリウム塩は様々な応用研究で活用されており、例えばアニオン種の補足能が知られている。ATP、AMP、双性アミノ酸などのアニオン種は、様々な生化学的プロセスで重要な役割を担っている。また、生体内に適度な量の無機アニオン種が存在しており、これらのアニオン種の定量分析による特定疾患の診断への応用も検討されている。さらに、産業廃水中のリン酸イオンや大気中の硝酸イオン、硫酸イオンなどは環境保全における重要な測定対象である。このように、様々なアニオン種の定性、定量分析の必要性が医療や環境測定を含むあらゆる領域で高まっている。一方で、アニオン種の捕捉・検出は、中性種やカチオン種に対する科学と比較して、立ち後れているのが実情である。上記を考慮し、本研究ではvL-3CRが与えうるイミダゾリウム塩骨格に着目し、vL-3CRを活用することで新しいアニオン種の補足剤・ひいてはセンサー材料へと展開可能ではないかと着想した。 以上、本研究では、vL-3CRを活用した新しい高分子合成の展開ならびに得られるポリマーの応用に焦点を当てた研究を行ったので報告する。 Scheme 2. vL-3CRに基づく新規重縮合. 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 本研究では、はじめにvL-3CRが重縮合の素反応としてなり得るか検討した。このため、トリエチレングリコールを出発物質とした二段階合成により、ジアルデヒド基を有するモノマー(OHC-R1-CHO)を合成した。OHC-R1-CHO、市販ジアミン、α―スルホニルイソシアニドをモデルモノマーとし、vL-3CR重縮合を行った (Scheme 3)。なお、ジアミンとしては1,4-butanediol bis(3-aminopropyl)ether (H2N-R2-NH2)、α―スルホニルイソシアニドとしては、p-Toluenesulfonylmethyl isocyanide (TosMIC)を用いて、ジアルデヒド : ジアミン : TosMIC = 1 : 1 : 3とし、反応溶媒をDMSO、反応温度を50℃、反応時間を18時間として、重縮合を行った。重合完了後、再沈殿(良溶媒、水:Methanol=1:5、貧溶媒、THF)による精製を行い、褐色固体であるPolymer1を得た。 R1CHOR3TsCNR2NH2++NNR2R3R1−26−発表番号 13〔中間発表〕

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