2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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Scheme 3. ビスアルデヒド、ジアミン、およびTosMIC間のvL-3CR重縮合. はじめに、得られた生成物について、1H NMR測定を行った(Figure 1)。上段はOHC-R1-CHOの、下段は生成したPolymer1のスペクトルである。ジアルデヒドモノマーであるOHC-R1-CHOとPolymer1の1H NMRスペクトルを比較すると、Polymer1のスペクトルにおいて、10 ppm付近のアルデヒド基由来ピークが完全に消失していることが判明した。また、3~4 ppm付近に、ジアミンモノマー由来のオリゴエチレンユニットに由来するピークが観測された。さらに、一般的に8~9 ppmに観測されるイミン由来のピークが観測されていないことから、モノマー中のアルデヒド基が単にアミンと反応したのみならず、生成したイミンがさらに反応したことが強く示唆された。以上の結果より、vL-3CRによる重縮合が進行し、Polymer1が生成したことが示唆された。 Figure 1. ビスアルデヒドモノマー (上段)およびPolymer 1 (下段)の1H NMRスペクトル(測定溶媒:DMSO-d6). 続いて、得られたPolymer1についてGPC測定を行った(Figure 2)。GPC測定の結果より、数平均分子量が4.7×104 g·mol-1、分散度が1.4と観測され、充分に高分子量のポリマーが生成したことが分かった。このことから、vL-3CR重縮合が進行し、高分子鎖にイミダゾール骨格を有する新規ポリマーの合成に成功した。 Figure 2. Polymer 1の GPCトレース (測定温度:40 ºC、測定溶媒:0.01 mol·L-1 LiCl含有 DMF). 3. 今後の展開(計画等があれば) 本研究によって、vL-3CRが高分子合成にも充分に適用可能であることを初めて明らかにし、高分子主鎖にイミダゾール骨格を有するポリマーを高分子量かつ高収率で得ることが出来た。今後、イミダゾールや類縁体であるイミダゾリウム塩の特徴的な化学的性質を活かした高分子材料の応用に展開していきたい。 4. 参考文献 1. Kakuchi, R., Polym. J. 2019, 51 (10), 945-953. 2. Kakuchi, R., Kobunshi Ronbunshu 2015, 72 (9), 550-560. 3. Kakuchi, R., Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53 (1), 46-8. 4. Sisko, J.; Kassick, A. J.; Mellinger, M.; Filan, J. J.; Allen, A.; Olsen, M. A., J. Org. Chem. 2000, 65 (5), 1516-1524. 5. Van Leusen, A. M.; Wildeman, J.; Oldenziel, O. H., J. Org. Chem. 1977, 42 (7), 1153-1159. 5. 連絡先(掲載してよい場合、住所、電話番号、E-mailアドレス等) 住所:(〒376-8515) 群馬県桐生市天神町1-5-1 電話番号:0277-30-1447 E-mailアドレス:kakuchi@gunma-u.ac.jp ホームページ:https://org-polym-chem.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/ −27−

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