2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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ることによりポリマーが茶色に変色し,さらにその表面にはSCFDによりCuを堆積できることを見出した。酸化アニールという安価かつ簡便な手法により,SCFDによるポリマー表面への金属膜を堆積可能にする技術を開発できた。 図1. 3Dプリンタにより形成したポリマー表面へSCFDにより金属薄膜を堆積するための前処理技術 図2. 3Dプリンタにより形成したポリマーグリッド; (左)処理前,(中)未処理のまま製膜,(右)酸素アニール後に製膜 (2) 製膜する金属材料の選定 課題(2)に関しては金属薄膜によるTHz波の伝搬損失を最小化する材料を検討し絞り込みを行った。THz領域での物性値には不明なものが多く,ポリマー表面にコートする金属材料を計算による絞り込むことは難しく,実験的に追及した。導波管構造を形成し,SCFDにより金属コートするには材料毎に原料や製膜条件を探索せねばならず,時間がかかる。そこで,シリコン基板表面にスパッタリングにより金属薄膜を堆積し,それを一定間隔あけてスタックすることにより,グリッド構造を形成した。その後,連続波周波数可変型テラヘルツスペクトル測定システムを用い,電磁波の透過率を調べた。シリコン基板およびスタックするためのスペーサーはいずれも280μmとした。つまり,高さ280μm,幅10mmの空間を280μm間隔でスタックした構造を用意した。得られた透過率スペクトルを図3に示す。AuおよびCuが他の材料に比べ高い透過率を示した。これはグリッド内でのTHz波の導電損失が小さいことを意味し,金属薄膜材料として適していることを示している。Auは高価であることを考えると,Cuが金属薄膜材料の最有力候補であると結論できる。図4は3Dプリンタにより作製した導波管構造に対しSCFDによりCuを堆積した構造の外観写真である。適切にCuを堆積できており,導波管構造に向けた素地が整った。 図3. 金属薄膜をコートした長さ5mmのマルチチャネルグリッドの透過率 図4. 3DプリンタおよびSCFDにより形成した導波管の外観 3. 今後の展開 SCFDの反応場中でのポリマーの安定性およびSCFDの下地依存性が課題であったが,いずれも適切に解決し,当該手法の適用可能性が見えてきた。また,THz波デバイスの内壁コート用の金属材料に関しては研究グループにより意見が分かれていたが,同一プラットフォームにて比較を行うことにより,Cuが最適材料であることを示した。SCFDプロセスに関しては今後どの程度の複雑さあるいはアスペクト比の構造に対して適用可能であるか調べ,必要に応じて高度化する必要がある。材料に関しては,Cuが最適材料であることは分かったが,どの程度の厚みが必要であるかなどを検討することにより,最終目標である導波管構造の形成に至ると考えられる。 4. 参考文献 [1] IEEE P1785.2, IEEE802.15-1512-0351-00-0thz. [2] W.J. Otter, Electron. Lett. 53 (2017) 471. [3] H. Yasukochi, US patent US2012045617 A1. [4] T. Momose, The 24th International Conference on MEMS, Jan. 23-27, 2011. 5. 連絡先 momo@dpe.mm.t.u-tokyo.ac.jp scCO2+ Ru, CuMnOxFilmsscCO2+ O2Surface modificationSCFD feasiblescCO2+ PdParticles-0.10.10.30.50.70.90.30.50.70.91.11.31.5TransmittanceFrequency [THz]Au_5 mmCu_5 mmCr_5 mmTi_5 mmNi_5 mmNocoating_5 mm−31−

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