2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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導導電電性性高高分分子子//ググララフフェェンン複複合合体体にによよるるメメタタルルフフリリーー高高導導電電性性材材料料のの開開発発 神戸大学大学院工学研究科 教授 丸山 達生 1. 研究の目的と背景 グラフェンは炭素原子が二次元的に結合した、原子の厚みの炭素シートである。その薄くかつ大きな表面積、さらに優れた電気伝導性や強い力学物性、優れたガスバリア性から、電気電子材料や医療用材料への応用が強く期待されている。近年ではグラファイト(黒鉛)を液中で剥離・分散させる液相剥離法が最も低コストかつ大規模生産方法として期待されている。しかし、グラフェンの強い疎水性相互作用により、多くの溶媒中で凝集してしまうことで、物性の低下および加工プロセスの難化という重大な問題がある。その解決策として化学修飾または物理修飾による二つのアプローチが提案されている。共有結合を用いる化学修飾に比べて、物理修飾では界面活性剤などの分散剤とグラフェン間の弱い相互作用を利用するため、グラフェンに欠陥が生じず、また操作が簡便といった特徴を有する。しかしながら、この方法においても界面活性剤、高分子および芳香族系化合物といった分散剤は導電性が低いため、グラフェンの高導電性を妨げてしまうという課題があった。そこで本研究では、π共役系半導体高分子であるポリチオフェン(PTs)を分散剤として物理修飾法によりグラフェンを有機溶媒中に剥離・分散する方法を開発した(図1)。最終的には導電性材料への応用が可能なPT/グラフェン複合体の作製を試みた。導電性を有する分散剤を用いて、グラフェンの導電性を損なうことなく簡便に液相で分散できれば、グラフェンの応用を飛躍的に推進できると考えられる。 図1 ポリチオフェンを用いたグラフェンの剥離と分散 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 【実験】Mn=20000に分子量制御されたhexyl、hexyl(oxymethyl)、octyl、siloxane基を有する側鎖をもつPTs(それぞれP3HT、P3HOT、P3OT、P3SiT)を用いた1。P3HTのみ異なる分子量(Mn=6000)のサンプルを比較として用いた。使用したPTsは全て立体規則性(head-to-tail)が制御されたものである。トルエンに薄片化黒鉛およびPTsを添加し、超音波処理を行った後、吸光光度計による分散性評価を行った。湿式フロー粒子像解析装置を用いて薄片数、薄片サイズ測定を行った。つづいて、作製したP3HT/グラフェン複合体についてTEM、AFMを用いて、層数、サイズ、表面形態の顕微鏡観察を行った。P3HTの分子量およびP3HT/グラフェン混合比ともに最適な条件の分散液を用いて、銅微粒子(銅微粒子)の被覆を行った。加熱耐酸化試験(200℃、30 min)を行い、電気抵抗測定を行った。 【結果と考察】 分子量の異なるpoly(3-hexylthiophene) (P3HT)を合成し、このP3HTが薄片化黒鉛からグラフェン剥離および分散及ぼす影響を評価した。P3HTによる剥離操作後のグラフェン分散液の660 nmにおける吸光度を測定した(図2)。その結果、分子量6000のP3HTを用いた場合、トルエン中でP3HT/グラフェン複合体が最も高い分散性を示した。図3に異なるP3HT/グラフェン混合比に対するグラフェン分散液の660 nmにおける吸光度を示す。P3HTを添加することでグラフェンの分散性が向上し、過剰に加えると分散性が低下した。比較的分子量の小さなP3HTを用いることで黒鉛の炭素シート層間にP3HTが挿入され、グラフェンを剥離し、グラフェン分散が達成されたものと考えられる。 図2 吸光度測定によるP3HT /グラフェン複合体のトルエン中での分散性評価(挿入写真はPT/グラフェン複合体のトルエン分散溶液) −40−発表番号 20〔中間発表〕

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