2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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メメタタンン有有効効活活用用精精密密貴貴金金属属担担持持触触媒媒のの創創製製 東京理科大学理学部応用化学科 教授 根岸 雄一 11.. 研研究究のの目目的的とと背背景景 メタン(CH4)は天然ガスの主成分であり、海底からメタンハイドレードとしても採取できる炭化水素であり、大気汚染やCO2 排出の観点からも、比較的クリーンな燃料とされる。しかし、CH4は室温で気体であり、遠隔地への輸送の際に、輸送量を増やすために低温下での液体化が必要となることから、余剰なコストがかかる。ここで、CH4をメタノール(CH3OH)に容易かつ安価に変換することができれば、天然ガスといった燃料の輸送に有利となる。さらに、CH3OHは固体燃料電池の直接的な燃料としても利用できるため、近年このようなCH4−CH3OH変換技術の確立が望まれている。 光触媒を用いた化学反応は、熱や電気、圧力といった外力ではなく、光によって化学反応を誘起する。そのため、常温常圧下といった温和な環境下でも、その他の反応系では得られないような化学反応を引き起こすことができる。そのひとつとして、光触媒を用いた、CH4−CH3OH変換反応[1]が挙げられる(図1)。しかし、触媒活性はまだ低く、実用化にはさらなる改善が必要と考えられる。 ここで、微細な金属のクラスターは、対応するバル図1 光触媒を用いたCH4−CH3OH変換反応のメカニズム。C.B., V.B., Egはそれぞれ伝導帯、価電子帯、バンドギャップを示す。 ク金属とは異なる物性や機能を示す。さらに、それらの物性や機能は、金属クラスターの構成原子数及び化学組成に依存して変化する。我々は、その中でも、非常に微細な(<~2 nm)金属助触媒担持が水分解水素生成光触媒の高活性化に有用であることを見出してきた[2]。本研究では、規則的な多孔質構造を有するメソポーラス金属酸化物を利用し、そこに微細な酸化側助触媒の担持することによって、光触媒を用いたCH4−CH3OH変換における、更なる高活性化の可能性を明らかにした。 22.. 研研究究内内容容 ((実実験験、、結結果果とと考考察察)) 光触媒の活性は、その結晶性や3次元構造に大きく依存する。電子−正孔再結合中心となる欠陥の低減(結晶性の向上)と、単位体積あたりの反応分子のアクセスの向上(比表面積の増大)が、その高活性化に望ましいことは広く認識されている。ここで、結晶化度の高い秩序だったメソポーラス金属酸化物は、高い光触媒活性を示すことが報告されており[3]、本研究ではこのようなメソポーラス構造を有した酸化タングステン(m-WO3)を使用した。m-WO3は、メソポーラスシリカ(KIT-6)を、テンプレートとして、タングステン前駆体とKIT-6を混合し、焼成した後に、KIT-6テンプレートを除去することで、m-WO3を得た。こうしたサンプル調製において、得られたm-WO3の、powder XRD(図2a)から、WO3に帰属されるピークが得られ、透過型電子顕微鏡(TEM)画像(図2(b))から10 nm以下の細孔を有した粒子が観察された。 次に、反応活性点となる微細な金属酸化物錯体(M-SG; M = Ag, Co and Ni)を担持した。まず、Glutathione(SG)で保護されたAg-SG、Ni-SGおよびCo-SGを合成した。得られたNi-SG錯体のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量(MS)スペクトルを示す。(図2(c))。このスペクトルより、生成物は、Ni2(SGH)7Na2を主として含んでいることが確認された。得られたNi-SG 錯体は、Ni-SG 錯体とm-WO3を水中にて攪拌することにより、m-WO3上に吸着させた。上澄み溶液の誘導結合プラズマ質量分析より、Ni-SG 錯体は比較的高い吸着率にて光触媒上に吸着された −44−発表番号 22〔中間発表〕

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