2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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ことが確認された。m-WO3表面には−OH基が存在する。Ni-SG錯体の配位子に含まれる−COOH及び−NH2などの極性官能基が、これらの−OH基 と水素結合を形成するため、Ni-SG 錯体は高い吸着率にてm-WO3上に吸着したと解釈される。 その後、焼成してクラスター表面の配位子を除去することで、微細な酸化物微粒子助触媒が担持されたメソポーラス酸化物光触媒を得た(M-m-WO3; M = Ag, Co and Ni)。吸着および焼成後の光触媒の代表例として、焼成したNi-SG/m-WO3(Ni-m-WO3)のTEM画像を図2dに示す。Ni-m-WO3では超微細な粒子(0.6 ± 0.1 nm)が観察された。このようにして、サイズ分布が狭いm-WO3上に超微細な金属酸化物助触媒を担持す 図2 m-WO3の(a)XRDパターンと(b)TEM像。Ni:SGの(c)ESI-MSスペクトルと(d) TEM像 図3 m-WO3または、CoやNi助触媒を担持したm-WO3(Co-, Ni- m-WO3)の光触媒メタノール変換特性ることに成功した。 こうして得られたM-m-WO3の光触媒メタン−メタノール変換能を調べた。測定では、300 mg のM-m- WO3を水中に分散させ、既報に従って、水中温度を55 °Cに保ち、CH4(5 mL min-1)/He(18 mL min-1)混合ガス流通下で内部から高圧水銀ランプにより光を照射した。GC-MSの測定より、m-WO3によって生成したCH3OHは、標準試料で得られる質量スペクトルとよく一致しており、本反応によってCH3OHが生成していることが明らかとなった。異なる微細な金属酸化物助触媒(M = Ag, Co and Ni)を担持したm-WO3一連のサンプルのCH3OH生成活性測定(図3)において、いずれの金属酸化物を担持した際も、助触媒がない場合に比べてCH3OH生成の増加が生じた。 このとき、光触媒の表面上では、水(H2Oad)が吸着して、光励起酸化を介してホールが発生して、水酸基(OH−)から·OHラジカルを形成する。·OHラジカルは強力な酸化力を持ち、CH4を攻撃してメチルラジカル(·CH3)を生成する。こうして生成された·CH3ラジカルはH2Oと反応してCH3OHを生成すると考えられる(図1)。m-WO3上の金属酸化物クラスターは、これらの反応において、電子と正孔の間の電荷分離を促進し、それによって正孔が効率的に消費されることで、活性の改善が生じたと考えられる。 よって、今回の結果は、本手法による極微細なNiO 粒子の担持は、CH4−CH3OH変換活性向上に非常に有効な手段であることを明らかにした。 33.. 今今後後のの展展開開((計計画画等等ががああれればば)) 今回の担持法は原理的には、他の光触媒に対しても適用可能である。本手法を利用することで、今後、他の光触媒反応についてもこれまでよりも高い量子収率が得られることが期待される。特に、励起された電子を効率的に消費して反応を促進する方法(犠牲剤の添加や還元側助触媒の利用)の更なる検討も望まれる。 44.. 参参考考文文献献 [1] Y. Negishi et al., Semiconductor Photocatalysis InTech's publishing, 1-12 (2019). [2] Y. Negishi et al., Angew. Chem., Int. Ed., 59, 7076-7082 (2020). [3] K. Villa et al., Appl. Catal., B, 163, 150-155 (2015). 55.. 連連絡絡先先 negishi@rs.tus.ac.jp −45−

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