2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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細細胞胞移移動動にによよるるががんん免免疫疫抑抑制制解解除除をを目目指指ししたた免免疫疫細細胞胞誘誘引引・・捕捕獲獲ママテテリリアアルルのの開開発発 東京医科歯科大学生体材料工学研究所 准教授 木村 剛 1. 研究の目的と背景 がん微小環境においては、免疫抑制性の制御性T細胞(Treg)が集積し、がん増殖的かつ免疫抑制的な状態にある。これらの免疫抑制状態を解除するため、全身性薬剤投与によるTreg除去治療や免疫チェックポイント阻害剤による治療が検討されており、いつくかは臨床応用されている。このような免疫調節によるはがん治療は、新たながん治療として期待されており、一部において治療の有効性が示されているが、Tregは自己免疫にも強く関与しているため全身性の投薬では正常組織のTregまでも除去され自己免疫疾患が惹起されることが知られている。また、免疫チェックポイント阻害剤でも活性化されたT細胞ががん以外も攻撃する副作用の問題が残っている。従って、腫瘍選択的なTreg除去法の開発が必要と考えられる。我々の研究グループでは、抗体固定化フィルターによる免疫系細胞の捕集に関する研究を進めており、非細胞接着性材料に抗体を化学固定した基材での細胞選択的な捕獲を報告した1,2)。また、フィルターに捕獲した細胞を回収することにも成功している。そこで、本研究では、Tregに特異的な抗体である抗CD25抗体を非細胞接着性材料に固定化し、Tregの選択的捕獲およびがん免疫調節の可能性について検討した(図1)。 Fig. 1. Our strategy for tumor inhibition using antibody-immobilized material. 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 2.1. 抗Treg抗体固定化材料の作製 基材として、ポリエチレン(PE)を材質とするメッシュ(繊維径:86-200µm)および多孔質体(気孔径:32-157µm)を用いた。それぞれの基材をコロナ放電処理(15kV、1min)し、種々の濃度のアクリル酸溶液に浸漬させて脱気作業を行った。熱重合(60ºC、30min)によりメッシュおよび多孔質の表面にポリアクリル酸をグラフトした(PAAc-PE)。重量測定、接触角測定、FT-IR測定、メチレンブルー染色等にて基材へのグラフト導入を評価した。次に、抗マウスCD25抗体(mCD25)を用い、EDC反応により材料表面に固定化し、抗CD25抗体固定化材料(mCD25-PE)を作製した(Fig. 2)。免疫染色(DAB染色)により抗CD25抗体固定化の定性評価を行った。 Fig. 2. Synthesis of antibody-immobilized material. PAAcをグラフトしたメッシュでは、重量の増加、メチレンブルー(MB)での陽性染色が示され、PAAcグラフト鎖の導入が確認できた。PAAcグラフト量は、AAc仕込み量の増加に伴い増加した(グラフト密度: 1.5〜45 µg/cm2)。また、mCD25抗体を固定化した基材の免疫染色においては陽性染色が示され、抗体固定化メッシュが得られたと判断した。多孔質体においても抗体固定化が可能であったが、低気孔径の多孔体では内部での抗体固定化は困難であった(Fig. 3)。 Fig.3. MB and DAB staining of antibody-immobilized materials. 2.2. 抗Treg抗体固定化材料による細胞捕獲 次に、得られたmCD25抗体固定化材料によるTregの選択的捕獲について検討を行った。脾臓細胞に含まれる−52−発表番号 26〔中間発表〕

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