2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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CD25陽性細胞の割合をFACS解析した結果、CD25陽性細胞率は30〜50%であった。GFPマウスの脾臓細胞をmCD25抗体固定化材料に播種し、1時間インキュベートした。PBSにて洗浄後、蛍光顕微鏡にて観察を行い、接着細胞数を計測し、細胞接着率(接着細胞数/播種細胞数x100)を算出した。PAAcグラフト材料は約1.4±0.6%であったが、mCD25抗体固定化材料は22.8±0.9%の高い細胞接着率を示し、選択的な細胞捕獲を示された。また、10枚重ねたPEメッシュ、mCD25抗体固定化メッシュに脾臓細胞懸濁液を流し、細胞接着率(接着細胞数/播種細胞数x100)を算出した。PEメッシュは約10.9±1.3%であったが、mCD25-PEメッシュでは抗体固定化量の上昇に伴い捕獲率が向上し、24.1±4.5%の高い細胞捕獲率を示した(Fig.4)。 Fig. 4. Capture of Treg using antibody- immobilized materials. 捕獲したCD25陽性細胞の機能を検討するため、T細胞増殖抑制アッセイを行った。T細胞は樹状細胞の刺激を受け増殖するが、Treg細胞が存在した場合では樹状細胞からの刺激が抑制されT細胞の増殖は抑制される。このメカニズムとして、IL2と強い親和性を示すTreg細胞がIL2を介したT細胞増殖を阻害していると考えられている。本研究では、IL2レセプターと相互作用するCD25抗体を用いており、CD25抗体を介して捕獲したTreg細胞の増殖抑制機能への影響が懸念され、そこでT細胞増殖抑制アッセイ評価を行った。T細胞の増殖のFACS解析では、CSFEで蛍光染色したT細胞は、増殖分裂ごとに1つの細胞に含まれる蛍光分子の量が減少するため、細胞分裂が進むにつれ蛍光強度の低い細胞が検出される。樹状細胞およびT細胞のみを共培養した場合では、分裂細胞が検出され、未分裂細胞の割合は約40%であった。一方、捕獲したTreg細胞、樹状細胞およびT細胞の共培養では、Treg細胞数とT細胞数を比率の増加に従い未分裂細胞の割合の増加が示され、Treg細胞とT細胞を同数にした場合は未分裂細胞が約80%となった。未修飾PEとmCD25-PEでもその差異は認められず、捕獲したTreg細胞の機能維持が示された(Fig. 5)。 Fig. 5. Function of Treg captured by antibody- immobilized materials. 2.3. 抗Treg抗体固定化材料の皮下移植(in vivo実験) 抗Treg抗体固定化材料をマウス皮下に移植し、7日後に免疫組織染色(FoxP3)を行い、Treg捕獲を検討した。未固定のPEではTregが観察されなかったが、mCD25抗体固定化材料の周囲にてTregが観察された。これより、in vivoにおいてmCD25抗体固定化材料がTregを誘引捕獲することが明らかとなった(Fig. 6(A))。 B16メラノーマ担癌マウスを作成し、作製したmCD25抗体固定化材料を腫瘍近傍に留置した結果、腫瘍増大の抑制が示された(Fig. 6(B))。 以上より、抗Treg抗体固定化材料によるがん免疫調節の可能性が示された。 Fig. 6. (A) HE and IHC staining of implanted antibody-immobilized materials subcutaneously. (B) Tumor growth inhibition for antibody- immobilized materials. 3. 今後の展開 抗体固定化材料のチューニングにより腫瘍抑制能を最適化するとともに腫瘍抑制メカニズムを解明する。 4. 参考文献 1. T. Kimura et al. Sensor and Materials, 28, 1255-1263, 2016. 2. T. Kimura et al., Journal of Biomaterials Science: Polymer Edition, 28(10-12), 1172-1182, 2017. 5. 連絡先 東京都千代田区神田駿河台2-3-10、03-5280-8110、kimurat.mbme@tmd.ac.jp −53−

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