2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
60/206

人人工工オオルルガガネネララとと化化学学ププロローーブブにによよるる細細胞胞内内微微量量化化学学種種のの検検出出 名古屋工業大学大学院工学研究科 助教 吉井 達之 1. 研究の目的と背景 活性酸素種(ROS)や活性窒素種(RNS)など、細胞内には様々な生理活性を持つ化学種が存在し、それらがタンパク質と化学反応や相互作用を引き起こすことによってさまざまな細胞機能を制御している。また、化学種の異常な産生は疾病の原因となるため、化学種を選択的かつ高感度に検出する技術の需要が高まっている。近年では、蛍光プローブの発展により、細胞内でのさまざまな化学種の動態を可視化(イメージング)できるようになってきた。しかしながら、既存の蛍光プローブは感度が十分ではないという大きな課題が残されている。例えば、化学種に対する蛍光プローブは、化学種との化学反応によって蛍光を発するタイプ(turn-on型蛍光プローブ)が多いが、標的となる化学種の産生が一定量以上ない場合、得られる蛍光シグナルは検出限界を下回ってしまうためにそもそも検出できない。そのため、現在、微量化学種の高感度検出を目指して、蛍光量子収率、モル吸光係数の高い蛍光プローブの開発が試みられているが、そのようなプローブの設計指針は未だ確立されていない。加えて、水溶性や安定性など、細胞内イメージングに必要な要素を兼ね備えた蛍光プローブの開発となると一筋縄ではいかないのが現状である。細胞内の微量化学種を高感度に検知するためには、従来にないアイデアに基づいた新しい技術革新が必要とされる。 本研究では、蛍光プローブを生きた細胞内の局所に濃縮する技術を創製し、それを用いた微量化学種の超高感度検出システムを構築することを目的とする。その概念図を図1に示す。 図1研究の背景と本研究のコンセプト 従来の蛍光プローブは、細胞内を一様に拡散する。そのため、感度が低く、細胞内で産生される標的化学種の濃度が低いと検出できない。一方、もし化学種と反応した蛍光プローブを選択的に細胞内の局所に集めることができれば、同じモル数の蛍光分子が発生したとても、局所濃度が飛躍的に高まり、より微量の化学種を超高感度にイメージング検出できるものと考えた。 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 本研究で目指す高感度蛍光検出システムを実現のために図2のような系を考案した。細胞内にタンパク質の自己集合体(人工オルガネラ)をつくる。そこに標的化学種との反応で生成した蛍光プローブ分子を濃縮する。濃縮後、人工オルガネラ上でのみ光るような蛍光色素を導入したプローブ分子を合成する。細胞内に予め、蛋白質のクラスターを遺伝子導入によって作製し、プローブ分子を導入しておくと、検出したい化学種が発生した際に、プローブ分子が反応し、蛋白質に結合し、蛍光を発するというものである。本研究では、①人工オルガネラに提示したタグタンパク質に結合して蛍光が上昇する分子②人工オルガネラの開発が必要がと考えられた。したがって、それぞれの項目に関して検討した。 図2本研究で目指す蛍光検出システム タグタンパク質に結合して蛍光が上昇するプローブ分子の開発を試みた。タグタンパク質としては大腸菌由来のジヒドロ葉酸還元酵素(eDHFR)を選択した。このタンパク質はトリメトプリム(TMP)と特異的に結合す従来の蛍光プローブ本研究で提案する蛍光プローブ細胞内で蛍光物質は拡散細胞内で蛍光物質が一部に濃縮高感度低感度細胞細胞Turn-ON型蛍光プローブ反応基蛍光上昇濃縮された蛍光分子反応局所に集まる反応蛍光プローブ細胞膜細胞内で発生した微量化学種脱離蛋白質に結合細胞内プローブ分子蛍光色素リガンド反応基蛋白質構造体(人工オルガネラ)蛍光上昇 −54−発表番号 27〔中間発表〕

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る