2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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おいては、膜足場タンパク質MSP1D1の両親媒性ヘリックス欠損体MSP1D1ΔH5H6で調製したND(直径約7 nm)には、従来のND(MSP1D1、直径約 10 nm)に比べ単量体hTLR3が効率的に再構成されることを示唆する結果を得た。さらに、再構成後の試料のネガティブ染色電顕観察により、1つのNDに1分子のhTLR3全長が再構成されていることが明らかになった(図3)。 図3単量体TLR3-NDのネガティブ染色電顕像 リガンド (dsRNA) を介して2量体化させたhTLR3全長をNDに再構成する場合は、DMPC:DMPG = 1:1の脂質組成をもつND (MSP1D1) を用いると収量が最も多く、凝集体の割合が減少していた(図4)。また、再構成後の試料の電顕観察で凝集体が多く見られたため、2量体hTLR3間の会合を制限する目的でリガンドの修飾を検討した。その結果、一部の塩基対を2’-O-Me化したdsRNAを用いることで、凝集体の割合が減少し(図5)、クライオ電顕において分散したhTLR3分子の観察が可能となった。クライオ電顕構造解析により、ND (MSP1D1) に再構成した2量体hTLR3について分解能3.3Åの三次元密度マップを取得した (図6)。細胞外ドメインの2量体構造は明瞭に密度が確認され、膜貫通領域は弱いながらも密度が確認された。細胞外ドメインの構造は既報の結晶構造と一致していた。 図4NDの脂質組成の検討 図5修飾dsRNAの検討 図62量体hTLR3全長-NDの3次元密度マップ 3. 今後の展開 本研究により、単量体および2量体hTLR3全長をNDに再構成する方法が確立された。これまでにTLR全長の構造解析例はなかったが、種々の条件検討の結果、2量体hTLR3を脂質二重膜上に再構成した試料の構造解析に成功した。今回の構造解析の結果では、柔軟性の高い膜貫通領域と細胞内領域の密度を十分に観測できなかった。今後、更なる試料調製法の検討によりこれらの領域を解像し、脂質二重膜を隔てたTLR全長のシグナル伝達機構の解明を目指す。 4. 連絡先 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学大学院薬学系研究科蛋白構造生物学教室 TEL: 03-5841-4842 E-mail: umeji@mol.f.u-tokyo.ac.jp −59−

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