2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
70/206

光光科科学学ととナナノノDDDDSSのの融融合合にによよるる ミミトトココンンドドリリアアをを標標的的ととすするる治治療療抵抵抗抗性性癌癌にに対対すするる新新たたななアアププロローーチチ 北海道大学大学院薬学研究院 准教授 山田 勇磨 11.. 研研究究のの目目的的とと背背景景 光光線線力力学学療療法法による癌治療 (癌光治療)は、患部切除を行わずに選択部位の癌組織を死滅させるため、患者の身体的負担が少ない治療法として期待されている。しかし現状の癌光治療では、殺しきれなかった癌細胞が増殖することによる耐性癌発生のリスクがあり、それを解決する高効率な治療法の開発が望まれている。既存の抗癌剤の多くは核ゲノムに作用し癌細胞を死滅させるが、これらの抗癌剤に対する治療抵抗性の獲得は、癌治療のボトルネックとなっている。本研究では、癌細胞のミミトトココンンドドリリアアを標的とするナノカプセルを構築し、癌癌細細胞胞ののエエネネルルギギーー工工場場であるミトコンドリアを破壊する新たな癌治療戦略の検証 (参考文献1)を目的とした。 図図11 ミトコンドリアを標的とする癌光治療の概略図 Drug Delivery System (DDS)に関しては、我々が世界に先駆けて開発したミトコンドリアへの分子送達を可能とするミミトトココンンドドリリアア標標的的型型ナナノノカカププセセルル【【MMIITTOO--PPoorrtteerr】】 (参考文献2, 3)を用いた。本研究では、ミミトトココンンドドリリアアをを主主標標的的ととししたた光光機機能能性性分分子子のの送送達達・・光光殺殺細細胞胞効効果果を誘導する従来法と異なる新しい癌光治療法の開発を進めた (図図11)。 22.. 研研究究内内容容 本研究では、共同研究者・高野勇太博士 (北海道大学・電子科学研究所)が設計・合成した光機能性分子 (光科学)とMITO-Porter (ナノDDS)の融合による『ミトコンドリアを標的とする癌光治療』の実証を目標に据え、「光機能性分子搭載MITO-Porterの構築」、「モデル癌細胞を用いた治療戦略の実証」、「光照射時の細胞・ミトコンドリア評価」、「モデル動物を用いた癌治療戦略の検証」を中心に研究を進めた。 11.. 光光機機能能性性分分子子搭搭載載MMIITTOO--PPoorrtteerrのの構構築築 光刺激により活性酸素を発生する光機能性分子 1-OctおよびrTPAを搭載したMITO-Porterを調製し、粒子物性 (粒子径・表面電位)の最適化を図った。種々の検討を経て、150 nm程度の正に帯電した1-OctおよびrTPA搭載MITO-Porterの構築に成功した (参考文献4, 5)。また、対照ナノカプセルとして細胞導入能は有るがミトコンドリア融合能の無いR8-EPC-LP、細胞導入能も無いDOPE-LPも調製した。以降の実験は、rTPA搭載ナノカプセルの実施例を示す。 ナノカプセルの細細胞胞導導入入能能評評価価 (フローサイトメトリー)、細胞内動態解析に基づいたミミトトココンンドドリリアア移移行行能能評評価価 (蛍光顕微鏡)を行った。蛍光標識ナノカプセルをモデル癌細胞に添加し、細胞導入能を評価した。その結果、細胞導入能を有するrTPA-R8-MITO-PorterおよびrTPA-R8-EPC-LPにおいて効率的な細胞導入が確認された。次に、ミトコンドリアを赤色に染色後、細胞内局在を観察した。その結果、緑色標識のrTPA-R8-MITO-Porterは赤色のミトコンドリアと重なりあった黄色のドットとして多数観察された。一方、ミトコンドリア融合能の無いrTPA-R8-EPC-LPを用いた場合にはミトコンドリアとの局在はほとんど観察されず、細胞導入能の無いrTPA-DOPE-LPは細胞内で検出されなかった (図図22)。得られた解析情報を基に、rTPA-R8-MITO-Porterの構成組成をチューニングし、細胞導入能およびミトコンドリア移行能の最適化を図った (参考文献5)。 図図22 rTPAナノカプセルの細胞内局在観察 22.. モモデデルル癌癌細細胞胞をを用用いいたた治治療療戦戦略略検検証証 rTPA-R8-MITO-Porter (■)をモデル癌細胞に添加し、光照射後にWST-1アッセイによる細胞生存率を評価した。その結果、添加量に依存して細胞生存率が減少し、対照ナノカプセル(rTPA-R8-EPC-LP (■)、rTPA-DOPE-LP (■))と比較して有意に高い殺細胞効果を示した (図図33)。一方、光未照射時には細胞死は誘導されなかった (参考文献5)。 −64−発表番号 32〔中間発表〕

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る