2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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図図33 光照射時の殺細胞効果評価 33.. 光光照照射射時時のの細細胞胞・・ミミトトココンンドドリリアア機機能能評評価価 rTPA-R8-MITO-Porterをモデル癌細胞に添加し、光照射時の細胞およびミトコンドリアの形態を観察した。本実験は、北海道大学に設置されているニコンイメージングセンターにおいて、リアルタイムイメージング装置を利用して実施した。rTPA-R8-MITO-Porterがミトコンドリアに集積している細胞を光照射した場合、細胞が収縮する様子が観察され (図図44)、アポトーシス細胞死の誘導が示唆された。一方で、対照ナノカプセルを添加群では、光照射後の細胞形態変化は観察されなかった。また、ミトコンドリアを染色し光照射前後での形態を比較したところ、rTPA-R8-MITO-Porter添加群において癌細胞のミトコンドリアの断片化が観察された (図図44) (参考文献5)。これらの結果より、rTPA-R8-MITO-Porterがミトコンドリアに集積した際に光照射すると、ミトコンドリア形態異常(機能障害)に伴う細胞死が誘導されることが示唆された。 図図44 MITO-Porter処理後の細胞・ミトコンドリアの形態観察 44.. モモデデルル動動物物をを用用いいたた癌癌治治療療戦戦略略のの検検証証 Enhanced permeability retention (EPR)効果による癌集積能を有するDOXIL(R) (抗癌剤 (ドキソルビシン[DOX])封入リポソーム)に倣い、血中安定化素子Polyethylene glycol (PEG)の表面修飾、粒子径を調整したin vivoに適応した癌標的型MITO-Porterの構築に成功した。薬剤耐性癌に対する治療戦略の検証実験として、DOXを搭載した癌標的型MITO-Porter (DOX-MITO-Porter)を調製し (参考文献6)、DOX耐性を有するヒト腎臓癌細胞OS-RC-2を担持するモデルマウスを用いて抗腫瘍効果を評価した。その結果、DOX-MITO-Porterは、未処理群およびDOXILと比較して有意に高い抗腫瘍効果を示した (参考文献7)。本研究は、MITO-Porterを基盤とする薬剤耐性癌治療戦略の有用性を示唆するものであり、光機能性分子を癌ミトコンドリアへ送達する「ミトコンドリアを標的とする癌光治療」に大きく貢献する。 33.. 今今後後のの展展開開 研究期間内に、光機能性分子搭載MITO-Porterの構築に成功し、モデル癌細胞を用いた治療戦略の実証を行った。光照射時の細胞・ミトコンドリア評価した結果、MITO-Porter投与群においてミトコンドリア機能障害に伴う細胞死を誘導することが示唆された。さらに、モデル動物を用いた癌治療戦略の検証を進め、in vivo 適応型癌標的型MITO-Porterの構築および薬剤耐性癌における治療効果を確認した。今後は、モデル動物を用いた「ミトコンドリアを標的とする癌光治療」の検証研究を進めたい。 また、本DDS技術を臨床応用へ発展させるため、一般社団法人・こいのぼりが企画する創薬プロジェクト「7 SEAS PROJECT」への参画、資金獲得と社会への情報発信を実現するクラウドファンディングの活用など、研究環境を整備するために様々な活動に挑戦している。2019年には我々のミトコンドリアDDSをコア技術とて設立されたルカ・サイエンス株式会社の科学顧問に就任し、2020年4月に開設されたバイオDDS実用化分野 (産産業業創創出出講講座座)の研究代表者に就任し、『『ナナノノ医医薬薬品品』』の開発研究をさらに加速させる所存である。 44.. 参参考考文文献献 11.. Y. Yamada, Y. Takano, Satrialdi, J. Abe, M. Hibino, H. Harashima, 2020. Biomolecules 10: pii: E83 22.. Y. Yamada, H. Akita, H. Kamiya, K. Kogure, T. Yamamoto, T. Shinohara, K. Yamashita, H. Kobayashi, H. Kikuchi, H. Harashima, 2008. Biochim Biophys Acta 1778: 423-432. 33.. Y. Yamada, H. Harashima, 2008. Adv Drug Deliv Rev 60: 1439-1462. 44.. Y. Takano, R. Munechika, V.P. Biju, H. Harashima, H. Imahori, Y. Yamada, 2017. Nanoscale 9: 18690-18698. 55.. Satrialdi, R. Munechika, V. Biju, Y. Takano, H. Harashima, Y. Yamada, 2020. ChemCommun., 56: 1145-1148. 66.. Y. Yamada, R. Munechika, E. Kawamura, Y. Sakurai, Y. Sato, H. Harashima, 2017. J Pharm Sci 106: 2428-2437. 77.. Y. Yamada, R. Munechika, Satrialdi, F. Kubota, Y. Sato, Y. Sakurai, H. Harashima, J. (in press) Pharm. Sci. 55.. 連連絡絡先先 住所: 〒060-0812 札幌市 北区北12条西6丁目 電話番号: 011-706-3735 E-mail: u-ma@pharm.hokudai.ac.jp −65−

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