2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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これまで、マウス個体においてAIDシステムによりタンパク質分解を誘導に成功したケースはない。そこで、AID2システムを利用してマウス個体において5-Ph-IAA依存的に分解誘導が可能かどうかテストすることにした。そのために、OsTIR1*とEGFP-mAIDレポーターを導入したトランスジェニックマウスを作成した。このマウスは多くの臓器においてEGFP-mAIDレポーターの発現が観察された。このマウス腹腔に5-Ph-IAAを投与し、6時間後に臓器を摘出してレポーターの発現を調べたところ、各臓器のレポーターの大幅な発現量低下が認められた(図4)。 以上の研究により、AID2は従来のAIDに比べて優れた特性をもつのみならず、マウス個体においても応用が可能であることが明らかになった。 3. 今後の展開 AID2の研究成果の論文公表を目指して、論文投稿中である。早期公表を目指したい。さらに、今後はマウス個体におけるAID2の応用に関して、条件の指摘化を進める。現在の結果は、トランスジェニックマウスにおける結果であるため、OsTIR1*をROSA26などのセーフハーバー領域にもつマウスラインを樹立し、内在性因子にデグロンタグを導入して、分解制御の方法論を確立する。仮に、内在性因子をAID2で制御可能になれば、今後のマウスを用いた基礎研究、薬品開発、医学研究に大きなインパクトを与えることになると期待される。 4. 参考文献 Yesbolatova A, Natsume T, Hayashi KI, *Kanemaki MT Generation of conditional auxin-inducible degron (AID) cells and tight control of degron-fused proteins using the degradation inhibitor auxonole. Methods, 164-165, 73-80 (2019) Natsume T, Kiyomitsu T, Saga Y, *Kanemaki MT Rapid Protein Depletion in Human Cells by Auxin-Inducible Degron Tagging with Short Homology Donors. Cell Reports 15:210-218 (2016) Nishimura K, Fukagawa T, Takisawa H, Kakimoto T, *Kanemaki M An Auxin-based Degron System for the Rapid Depletion of Proteins in Nonplant Cells. Nature Methods 6:917-922 (2009) 5. 連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田1111 国立遺伝学研究所 遺伝メカニズム研究系 分子細胞工学研究室 教授 鐘巻将人 mkanemak@nig.ac.jp −73−

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