2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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EEGGFFレレセセププタターー細細胞胞外外領領域域のの構構造造変変化化をを捉捉ええるる新新規規蛍蛍光光ププロローーブブのの創創製製とと 評評価価系系構構築築研研究究 北里大学薬学部 助教 水口 貴章 1. 研究の目的と背景 ヒト上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor; EGF)レセプターは,細胞の分化や増殖に関わる一回膜貫通型タンパク質であり,その細胞外領域にEGFなどのリガンドが結合すると,構造変化・二量化・細胞内領域チロシンキナーゼの活性化・C末端領域のチロシン残基のリン酸化(自己リン酸化)を引き起こし,細胞内シグナル伝達経路の活性化し,細胞の分化・増殖を促進する1,2(図1)。 EGFレセプターは多くのがん細胞で過剰発現が観測されており,その無秩序な活性化が細胞の異常増殖に関係している3,4。そのため,EGFレセプターを標的とした抗がん薬開発が盛んに行われ,すでに細胞外領域に対する抗体医薬および細胞内のチロシンキナーゼ阻害薬などが上市され,がんの薬物治療に大きく貢献している。しかし,間質性肺炎や皮膚障害といった重篤な副作用や医療費の高騰など,がん患者及びその家族が抱える負担も大きいという問題点もある。これらを緩和する方策の一つとして,今もなお,新たな作用機序のEGFレセプター阻害薬の開発が待ち望まれている。そのため,申請者は,「二量化阻害」研究をはじめ,新規作用機序のEGFレセプター阻害薬創製を目指した研究を行っている5-9。本テーマでは,EGFレセプター細胞外領域の「構造変化阻害」研究に繋げられる新規蛍光プローブの創製および評価系構築を目指した。 EGFレセプター細胞外領域 (EGF Receptor Ectodomain; EGFR-ECD) はドメインI–IVの4つに区分され,ドメインIIとIVが繋ぎ止められている状態(抑制型)に,EGFなどのアゴニストがドメインIとIIIに挟み込まれるように結合することで,回転性の構造変化が起こり,ドメインIIがむき出しになった状態(活性型)に変化した後,二量体を形成する10(図2)。すでに解明されたEGFR-ECDとアゴニストEGFとの共結晶構造解析11では,ドメインIIから伸びた二量化アームと呼ばれる特徴的なβヘアピン構造が存在し,このアーム先端はドメインIVとの分子内相互作用を形成しており,二量体化を自己抑制すると考えられている。そのため,EGFR-EDCのドメインIIとIVが近づいた状態を抑制型と表現される。一方,EGFR-ECDの二量体結晶構造12では,二量体界面に二量化アームが存在し,このアーム先端には水素結合などのレセプター間相互作用が密集しているため,EGFR-ECDの二量体形成に重要だと考えられている。 構造変化阻害という新規作用機序のEGFレセプター阻害薬リードの創製に繋げるために,本研究テーマでは,この構造変化を認識できる新規蛍光プローブの創製とその構造変化を定量できる評価系の構築を目指した。まずは,構造変化に寄与している二量化アーム構造に着目したプローブ分子の創製を試みた。 図図1. EGFレレセセププタターー活活性性化化機機構構 図図2. EGFレレセセププタターー細細胞胞外外領領域域のの構構造造変変化化とと活活性性型型二二量量体体 −2−発表番号 1〔中間発表〕

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