2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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スペクトルを測定したところ、グアニン4重鎖構造に特徴的なピークが得られ、このピークがカリウム存在下で増強されたことからグアニン4重鎖構造の存在が示唆された。 また、このDNAアプタマーは、細胞膜上に発現させたFGFR2bに結合することが、フローサイトメーターを用いたアッセイにより確認された。FGFR2bに対するDNAアプタマーは現在まで報告されておらず、初めてその取得に成功したと言える。 続いて、DNAアプタマーを連結してダイマー化し、FGFR2bの活性化を引き起こすことができるか確認した。DNAの二本鎖形成や末端の直接連結などによって、複数のDNAアプタマーダイマーを作成した。このアプタマーダイマーを、FGFR2bを発現するヒト細胞株 SNU-16に作用させ、FGFR2bの活性化、すなわちリン酸化をウェスタンブロッティングで評価した。ただし残念ながら、いずれのアプタマーダイマーもFGFR2bの活性化を誘起できなかった。アプタマーモノマーはFGFR2bに細胞上でも結合していることが確認されていることから、アプタマーダイマーによるFGFR2bの二量化形成時において、内部活性化に必要な要件を満たしていないためであると考えられる。 3. 今後の展開(計画等があれば) FGFR2bに結合するDNAアプタマーを取得した。実際に細胞膜上のFGFR2bに対する結合も確認された。FGFR2bに対するDNAアプタマーは現在まで報告されておらず、初めてその取得に成功したと言える。ただし現在のところ、アゴニストとして機能するアプタマーダイマーの設計は実現できていない。これまでにFGFR1cに対するDNAアプタマーをもとにアゴニストの設計が実現でき、iPS細胞の未分化維持に展開できる可能性を示していることを考えると、より精密な設計や異なるDNAアプタマー配列の利用によりFGFR2bに対するアゴニストの設計も実現でき、生体治療や再生医療に向けた応用が可能になると期待できる。 4. 参考文献 [1] Mark A. Lemmon, and Joseph Schlessinger. Cell 2010, 141, 1117-1134. [2] Guokai Chen, Daniel R. Gulbranson, Pengzhi Yu, Zhonggang Hou, James A. Thomson, Stem Cells 2012, 30, 623-630. [3] Ryosuke Ueki, Saki Atsuta, Ayaka Ueki, Junya Hoshiyama, Jingyue Li, Yohei Hayashi and Shinsuke Sando. Chem. Commun. 2019, 55, 2672-2675. 5. 連絡先 113-8656 東京都文京区本郷7-3-1 ssando@chembio.t.u-tokyo.ac.jp 6. 謝辞 本研究は、東京大学大学院工学系研究科 植木亮介氏、江口晃弘氏、植木彩香氏との共同研究として実施されました。本研究実施にあたり,研究助成を賜りました公益財団法人 旭硝子財団に御礼申し上げます。 −85−

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