2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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偏偏光光全全反反射射蛍蛍光光XXAAFFSS法法のの高高度度化化にによよるる触触媒媒活活性性点点立立体体構構造造ののオオペペラランンドド計計測測 北海道大学触媒科学研究所 准教授 髙草木 達 1. 研究の目的と背景 触媒は化学反応系に少量存在することで反応速度を増大し,かつ,特定の反応だけを起こすことが可能な物質である.ファインケミカルズや医薬品の合成,自動車排ガスの無害化など,産業や環境に有用な多くの化学反応に用いられている.実用的に用いられるのは,80%以上が固体触媒である.固体触媒において,「触媒反応中にどういった電子状態及び立体構造(三次元原子配列)を有する表面ナノ構造が形成され,活性サイトとして機能しているのか?」を解明することは,活性-構造相関を真に理解し,更なる高活性化への指針を得るために不可欠である.超高真空技術をベースにした表面ナノ構造解析法の発展と単結晶モデル表面調製法の進歩により,構造不均一性の大きな実触媒(粉末)では得るのが困難な,詳細な活性構造情報が得られるようになってきた.申請者の所属するグループは超高真空環境で動作する偏光全反射蛍光XAFS法を独自に開発し(図1),実用的に最もよく用いられる酸化物担持金属触媒に焦点を当て,TiO2やAl2O3の酸化物単結晶上の単原子金属や金属ナノ粒子(Ni, Cu, Pt, Au)の電子状態(XANES)や立体構造(EXAFS)を解明し,触媒機能との相関を議論してきた(1), (2).一方,近年,通常は超高真空で動作する表面ナノ構造解析法において,差動排気等により試料周りを高いガス圧力とし,高温下触媒反応中でのオペランド測定が可能となってきた.例えば,放射光利用ambient pressure (AP) XPSを用いた,PtやPd単結晶表面上のCO酸化反応では,超高真空領域(< 10-5 Pa)では表面が金属状態を維持して反応が進行するが,100 Pa程度では,表面に酸化物層が形成され,それが活性相と推測されている(3).すなわち,活性サイトや反応機構は圧力領域によって本質的に異なることが報告されつつある(圧力ギャップ).触媒反応の正確な理解には,超高真空から実用圧力(~大気圧)までの,圧力ギャップによる反応様式の差異をモニターし,酸化物上活性金属種の電子状態及び立体構造を厳密に決定できる手法の開発が不可欠である. 本研究の目的は,独自に開発を行ってきた超高真空偏光全反射蛍光XAFS法を高度化し,超高真空から大気圧までの圧力領域で,触媒反応の進行状況をモニターしながら,活性金属ナノ構造の電子状態及び立体構造を取得できる手法(オペランド偏光全反射蛍光XAFS法)を開発することである.さらに本手法を,Pt/Al2O3(0001)モデル触媒による,自動車排ガス浄化の基幹反応であるCO酸化反応に適用し,Pt活性点の電子状態(XANES)と立体構造(EXAFS)の決定を試みた. 図1. 偏光全反射蛍光XAFS法の概略と試料回転による偏光依存XAFS測定.偏光EXAFSでは,X線電場ベクトルに平行な結合情報(結合原子や距離,配位数など)を選択的に抽出し,単結晶表面上に分散した金属種の立体構造(三次元原子配列)を決定できる. 2. 研究内容 図2は,開発したオペランド偏光全反射蛍光XAFS装置の概略図である.装置(小型真空槽)は,偏光全反射蛍光XAFS測定用セルとして機能すると同時に,触媒反応検出のためのバッチ式反応器としても機能するよう設計・製作を行った.槽内の有効内容積は可能な限り小さくし(216 cm3),四重極質量分析計による内部ガス分析機構を装備することで,単結晶基板試料(15×15×0.5 mm3)の極めて低い比表面積(実触媒の10万分の1)においても,触媒反応検出を可能とした.試料は,大気圧付近までのガス存在下,試料背面に取付けたシリコンヒーターによって800 K程度まで昇温可能である.また,試料(試料を固定した試料ホルダー)は大気に晒すことなく,別の試料調製・分析用超高真空チャンバー(ベース圧力5×10-8 Pa)との間を移送でき,試料の前処理(Ar+スパッタリング,高温アニーリング,金属蒸着など)やX線光電子分光(XPS),低速電子回折(LEED)による評価を可能とした. −90−発表番号 45

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