2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
97/206

図2. 開発したオペランド偏光全反射蛍光XAFS装置の概略図. 反応ガス導入用ライン及び生成ガス検出用ライン(四重極質量分析計に接続)を備えた小型真空槽をゴニオメーター上に設置し,試料移動(x, y, z)と回転()により全反射条件の最適化と蛍光XAFS測定を行う.偏光依存測定は試料を90度回転()して行う. 試料調製・分析用超高真空チャンバー内で-Al2O3(0001)単結晶表面にPtを真空蒸着して試料を調製後(Pt/Al2O3(0001) .Pt被覆率: 5.1×1014/cm2),大気に晒さずにオペランド偏光全反射蛍光XAFS装置に移送し,反応ガス(CO:O2:Ar = 0.3:1.0:0.1,全圧100 Pa)導入後に,室温から353 K,393 K,433 K,473Kと段階的に試料を昇温して触媒活性試験を行った.その結果,473 Kにおいて生成物であるCO2を検出し,本装置によって触媒反応のモニタリングが可能であることを確認した.また,触媒活性試験と同時に,各温度(室温,353K,393K,423 K,473K)において,Pt L3吸収端XANES測定を行ったのが図3である.吸収端における立ち上がりのピーク(white lineと呼ばれる)の強度は,s-偏光及びp-偏光ともに温度上昇に伴い,徐々に減少した.white lineはPt原子における2p3/2から5d空軌道への電子遷移に対応し,Pt原子の酸化状態を反映する.すなわち,ピーク強度が大きいほど5d空軌道の状態密度が高く,Ptはより酸化した状態である.図3の結果から,Ptは昇温に伴い徐々に還元され,473 Kで示した程度に還元されるとCO酸化活性が発現すると考えられる.酸化状態の定量的評価については,今後,様々な標準試料のXANES測定を行うことで明らかにする. CO酸化反応中のPt活性点の立体構造情報を得るため,EXAF測定も試み,解析に十分なS/N比のスペクトルを得ることができた.発表では,CO酸化反応中のPt活性点立体構造モデルについても議論する. 図3. Pt/Al2O3(0001)表面の反応ガス(CO:O2:Ar = 0.3:1.0:0.1,100 Pa)存在下,昇温時におけるPt L3吸収端XANES測定(KEK IMSS PF BL-9A).左図:s-偏光,右図:p-偏光. 3. 今後の展開 オペランド偏光全反射蛍光XAFS法は種々の担持金属触媒及び触媒反応に適用できるため,今後,活性点立体構造や反応メカニズムを原子レベルで解明し,更なる高性能化への指針を得るために不可欠な手法となることが期待される.一方で,課題も明らかになった.現状,触媒反応検出は一定時間ごとの装置内ガスサンプリングによるバッチ式のため,高活性状態(高温で反応が速く,XAFS測定中に装置内ガス分圧が大きく変化し、触媒構造が変化する場合)には対応できていない.そこで今後は,マスフローコントローラーを用い,組成・流量制御した反応ガスをセル内にフローさせることで,反応中の触媒表面を常に同一のガス分圧環境に置き,バッチ式では対応が難しい高活性状態においても,定常状態のXAFS測定を可能にする予定である. 4. 参考文献 (1) S. Takakusagi et al., Chem. Rec. 19 (2019) 1244. (2) S. Takakusagi et al., Top. Catal. 56 (2013) 1477. (3) H. Kondoh et al., Catal. Today 260 (2013) 14. 5. 連絡先 〒001-0021 北海道札幌市北区北21条西10丁目 北海道大学触媒科学研究所 触媒表面研究部門 TEL & FAX: 011-706-9114 E-mail: takakusa@cat.hokudai.ac.jp −91−

元のページ  ../index.html#97

このブックを見る