2022 (31st)
Blue Planet Prize Winners
2022年(第31回)
ブループラネット賞受賞者
ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代ブータン王国国王陛下(ブータン王国)
1955年11月11日生まれ
ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代ブータン王国国王陛下は、人々の幸福を開発活動や計画の中心におく国民総幸福量(Gross National Happiness: GNH)という開発哲学を提起した先見の明をもつ指導者である。GNHは、環境を保全すること、持続可能で公正な開発を行うこと、総合的な幸福に役立つ文化を振興し、社会的価値を高めることに意義を与える。幸福度を社会的指標として利用することは国連が採用しており、OECD(経済協力開発機構)も報告書に使うなど、新しい枠組みのための着想を現代社会に対し与えた。
受賞の辞
旭硝子財団が地球の繊細な自然環境を保護、修復するために、世界の献身的な人々による取り組みを促進、顕彰するブループラネット賞を創設されたことに対し心から謝意を表します。地球温暖化、大気汚染、水質汚濁、自然災害の増加といった問題は非常に深刻になってきており、対策として世界各国が協調した継続的な取り組みが必要です。
科学者や経済学者は、革新的な発見や研究を通して、環境を守りつつ経済成長と科学技術の発展を両立するような持続的な方法を推進するという重要な役割を担っています。政治的なリーダシップを執るとともに、政治的指導者が科学者や経済学者による取り組みに関与することにより、私たちの住み家である地球の健全性を保つために必要な手段を計画し、その実行に向けて私たちは前進できるでしょう。
スティーブン・カーペンター教授(米国)
1952年7月5日生まれ
ウィスコンシン大学陸水学センター名誉所長 名誉教授
スティーブン・カーペンター教授は、40年以上、湖の生態系の研究を行なってきた。教授は、リンや窒素等の栄養塩類による富栄養化の研究を通じ、湖のレジリエンス(回復力)を、数理モデルを使って解明し、社会-生態系に対する新しい考え方を提示した。また、土地利用に起因するリンや窒素の環境問題について取り組み、リンの地球化学的循環の危機的状況を示すなど、人間の行動を地球化学的視点から見直す端緒をつくった。
受賞の辞
ブループラネット賞を受賞し、身の引き締まる思いです。「すばらしい地球にともに生きる人間と他の多くの生物を育んでくれる生態系を修復し守る」というこの賞の目的を心から素晴らしいと思います。この使命は現代の最大の課題であり、やるべきことは山積しています。この名誉ある賞の歴代受賞者たちの素晴らしい業績には圧倒されますが、自分もそこに加われるのは非常に名誉なことです。
全ての生命体にとって食物と水はなくてはならないものです。私たちが食料を生産する今のやりかたは、淡水やそれが育む生物を含む生態系に大きな影響を及ぼしています。ブループラネット賞をいただき、これからも人間と自然の共生圏における自然のレジリエンスを高め、淡水の流れや水質を改善し、地球上の生物と人類の幸福に役に立つ変化を探し求めるために、科学と人々を巻き込んでいく仕事を続けようと思います。