旭硝子財団では、若い世代が地球環境に関する課題に主体的に向き合い、自ら考え、行動へとつなげていく学びの機会を支援しています。また、専門家による講演や対話の機会を通じて、参加する若い世代が多様な視点に触れながら学びを深める機会を提供しています。
こうした取り組みの一環として、2025年(第2回)「若い世代のための地球環境問題ワークショップ等」において、環境探究学研究会による企画「環境探究フォーラム2026」を採択し、2名の専門家を講師として派遣しました。(主催:環境探究学研究会 公式サイト)
開催概要
2026年3月28日、千葉県市川市の千葉商科大学において、「環境探究フォーラム2026(第7回環境探究学研究会)」が開催されました。本フォーラムには、小学生から大学生、一般参加者まで幅広い世代が参加し、自然環境や社会に関する探究成果の発表が行われました。発表は対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で実施され、会場約30名、オンライン約15名が参加しました。
小学生・中学生による探究発表
午前の部では、小学生・中学生による探究発表が行われました。地域の自然観察や歴史調査、社会問題の考察など、身近な疑問や関心から出発した多様な研究が紹介されました。
発表後には質疑応答が行われ、専門家からの質問やコメントも寄せられました。
発表者にとっては、プレゼンテーションの経験に加え、新たな視点に触れ、考察を深める貴重な機会となったことと思います。
また、同世代の発表を聞くことで、互いの関心や探究の進め方に刺激を受ける場ともなりました。
仲井勝巳先生による講演
「日本や世界の自然・文化に触れて―関わりの中での気づき―」
午前の発表の最後には、仲井勝巳先生(京都女子大学発達教育学部教育学科)による講演が行われました。
講演では、日本や世界各地での自然や文化に関する多彩な体験をもとに、人と自然との関わりの中で生まれる気づきや学びについて紹介されました。
また、自然環境や地域の文化に実際に触れ、観察しながら考えることの大切さが語られました。
質疑応答では、中学生から今のうちに取り組んでおくべきことについて質問が寄せられ、学びを自分自身の行動や考え方につなげようとする姿勢がうかがわれました。
高校生・大学生・一般による研究発表
午後の部では、高校生、大学生、一般参加者による研究発表が行われました。会場は2つの教室に分かれ、生物多様性、生態調査、DNA解析、地域社会と自然環境の関係など、自然科学から社会科学まで幅広いテーマの研究が紹介されました。
各発表後には質疑応答が行われ、参加者や専門家から多くの質問や助言が寄せられました。
研究の前提や方法、考察に踏み込んだ議論も行われ、発表内容をより深く見つめ直す機会となったという参加者からの感想が寄せられました。
橋本禅先生による講演
「生物多様性と私たちのつながり」
午後の研究発表の後には、橋本禅先生(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)による講演が行われました。
講演は、「そもそも生物多様性って何だろう?」という問いからスタートしました。
生物多様性とは、
・森や川、海などの環境の違い(生態系の多様性)
・動物や植物など、生きものの種類の豊かさ(種の多様性)
・同じ種の中にもある個性の違い(遺伝子の多様性)
といった、いくつもの“多様さ”が重なり合って成り立っているものです。
「少し難しそう」と感じる言葉ですが、実は私たちの暮らしととても身近につながっています。
たとえば、毎日食べている食べ物。世界の食料作物の多くは、ミツバチなどの生きものによる受粉に支えられており、全体の75%以上がその恩恵を受けているといわれています。つまり、生物多様性は「自然の中の話」ではなく、私たちの食卓や生活そのものを支えている存在なのです。
講演ではさらに、
・将来の薬や食料につながる可能性
・災害や環境変化に強い社会をつくる力(レジリエンス)
・水や空気、気候を整える働き
など、生物多様性が持つさまざまな役割も紹介されました。
一方で、世界では現在、約100万種もの生きものが絶滅の危機にあるとされています。
人間の活動によって自然環境が変化し、豊かさの裏側で多くのものが失われている現状についても触れられました。
また、生物多様性の問題は、開発や気候変動といった分かりやすい要因だけでなく、私たちの消費や暮らし方とも深く関係しています。「遠い国の自然の問題」ではなく、自分たちの選択や行動ともつながっているテーマであることが、具体例とともに示されました。
講演を通して、身近な自然に目を向けること、そして日々の暮らしを見つめ直すことの大切さが、やさしく伝えられました。
環境探究学研究会 事務局担当 長濱和代先生(千葉商科大学)より
環境探究フォーラム2026は環境探究学研究会第7回大会として、今年は千葉商科大学で対面とオンラインでの開催となりました。
小学生から大人(一般)まで、ご自分の探究(研究)を発表頂き、参加者からコメントを頂くことで、それぞれの探究に磨きがかかり、さらに進化していくことを、毎年開催しているフォーラムから実感しています。
今後も、多くの皆さまにご参加いただき、探究学習の可能性について、ともに考えていけたら幸いです。
今回は旭硝子財団に講師派遣のご支援を頂き、お二人の先生方から貴重なお話を頂きました。心より感謝申し上げます。
旭硝子財団から
本フォーラムのように、探究活動の成果を発表し、世代や専門分野を越えて学び合う機会は、参加者にとって新たな気づきや視点をもたらします。
旭硝子財団は、「若い世代のための地球環境問題ワークショップ等」を通じて、今後も若い世代の学びと探究を支える取り組みを継続してまいります。
今回参加した専門家
・仲井勝巳(京都女子大学発達教育学部教育学科講師)
・橋本禅(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
